マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
新聞で見つけたある高校球児の談話。
甲子園のヒーローとは別の「凄さ」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/08/28 16:30
甲子園のヒーローたちだけが高校野球の主役ではない。その隅々に球児たちの人生があるのだ。
車で20分もいけば「大阪桐蔭」に着く。
奈良の生駒なら、大阪へ向かう峠道を車で20分ものぼっていけば、もう「大阪桐蔭」のグラウンドである。
考えてみれば“すぐそこ”で、実は同じ3年間を共に「高校野球」と格闘していた彼らの快挙を、角井亮太はどう受け止めたのだろうか。
遠い異国の出来事のように聞いたのか、それとも、今ごろになって、いまさらのように湧き上がってくる悔しさに地団駄を踏みながら、快挙の一瞬の映像を映すテレビのスイッチをいまいましく切ったのか。そのどちらでもないのか。
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最後の夏、2試合とはいえ、7打数6安打5打点、長打2本と打ちまくった大型遊撃手。
それに、なんたって、これだけの「男」だ。きっとこの先も、新たな舞台で人生と向き合っていくはずだ。
生駒高主将・角井亮太。
今は、新聞紙上のたった100文字ほどの記事で“出会った”だけの球児ではあるが、この先どこかの球場でもいい、グラウンドでもいい……一度、本当の姿に出会ってみたい。
夏の甲子園が終わってしまった夏。
それは、空想の夏なのかもしれない。