“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
酷暑の中の高校総体サッカー決勝。
山梨学院vs.桐光学園で何があった!?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/20 07:00
試合終了直後のピッチ上。桐光学園の10番が座り込む前で、山梨学院の選手達は初優勝の喜びを爆発させていた。
「決勝で夢と希望を与えるゲームを」
桐光学園の鈴木監督は言う。
「インターハイは過酷な大会。でも、ここで活躍することでプロの目にもとまるし、上位に行けば大学などの進路が全然違う。そういう意味で、インターハイは高校生の選手にとって『見てもらえる場所』としては大きなプラスだと思います。
しかし、やはりリスクはある。
観戦に来た小、中学生に、インターハイ決勝で夢と希望を与えるゲームをしなければいけないのに、連戦の最後ということで、プレーの質を問われると厳しいと言わざるを得ない試合になってしまうことが多い。
高体連サッカーの発展のためにも、真剣にキックオフ時間やレギュレーションを考えていかないと、いつか取り返しのつかない事故が起こってしまうのではないかと心配しています。
選手を守りつつ、試合ではもっと質の高いプレーをしないと。
高校サッカーは大人が子供を育てる大事な教育の場でもあるわけなので、やっぱりなんとかフェアな状況で試合をさせてあげたかった。準決勝からある程度の時間を与えてあげたかった。雷では鳴ってから30分間は中断と厳密にやることは大事だけど、ならば試合終了後から20時間以上空けて欲しかった。少なくとも前の試合からは20~24時間くらいは空けて欲しい。
冬の時期じゃなくて、猛暑のこの時期だからこそ、試合の時間管理は重要になってくると思う。2大大会の1つとして、年末年始の高校選手権と比べると過酷過ぎて、競技の維持向上になかなかつながりにくくなってしまうのでないか、と」
選手もスタッフも頑張ったが……。
たった1日の予備日を設けるだけでも状況は緩和されるし、その中で工夫ができる。だが、現状ではそれすらも叶わない――。
最後にこれだけは付け加えておきたい。会場設営や中断の判断、中断中の選手や観客などへのケアなど、三重県の会場運営にあたった三重県の教職員、三重県サッカー協会の方々の尽力は素晴らしいものがあった。彼らもまた、この過密スケジュールの「被害者」でもあったのだ。どうしても動かせない枠組みの中で、それぞれ事情を抱えているにもかかわらず、朝早くから夜遅くまで最善の対応をしてくれたのは間違いない。
そういう人たちのためにも、やはり枠組みや開催地などの抜本的な改革は必要ではないだろうか。
もう一度考えて欲しい。何のための、誰のための大会なのか――今そこにある危機から目を背けてはいけない。