“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
酷暑の中の高校総体サッカー決勝。
山梨学院vs.桐光学園で何があった!?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/08/20 07:00
試合終了直後のピッチ上。桐光学園の10番が座り込む前で、山梨学院の選手達は初優勝の喜びを爆発させていた。
スケジュール変更可能だったのでは?
だが、結論は11時キックオフ。変更はされなかった。
結果、桐光学園は悪夢の様な敗戦を喫した。もちろん山梨学院の優勝に疑問は一切ない。彼らも鈴鹿と同時刻にキックオフした四日市市中央緑地陸上競技場での準決勝で、雷による1時間24分の中断を経験している。実は、彼らもまた「被害者」だったのだ。
「自分の甘さが出ました。もっと走れていたら……自分がしっかりと競り勝っていたら……本当にまだまだだと思います」
試合後、失点に絡んだ望月は唇を噛んだ。だが、筆者は憔悴した表情でこの言葉を口にする望月の姿に、胸が締め付けられるような思いを抱いた。
望月だけではない、西川を始め、敗れた桐光学園の選手たちは異口同音に、走りきれなかった、戦いきれなかった自分の甘さを口にしていた。
もちろん、「はい、暑くてまともなプレーができませんでした」とか、「昨日の疲労で走れませんでした」と素直に口にする選手などいない。しかし、今回は明らかに彼らに「非」はないと思う。
異常気象ともいえる酷暑なのに……。
インターハイは当たり前だが「プレーヤーズ・ファースト」と謳っているが、今大会を見ると決してそうとは受け止められなかった。はっきり言って、「競う」という要素よりも、大会運営を「こなす」という要素が前面に出てしまっている気がしてならない。
もちろん、戦った選手、大会運営にかかわったスタッフは全力を尽くしたし、そこを否定するものではない。
だが、この炎天下だ。1週間で1日の休息日を挟んでの6試合。
キックオフ時刻は1、2回戦だと基本的に10時、12時(13時)、14時(15時)で、3回戦と準々決勝は10時と12時。準決勝と決勝は11時だった。
全国的に見ても異常気象と言えるこの酷暑の下、真夏の連戦で試合と試合の間隔がギリギリ24時間か、24時間を切ることもあり、さらに1~3回戦、1日休んでの準々決勝~決勝と続いていく連戦は、異常気象と言われる前から過酷だとされていた。
そこに今夏の異常気象が加わったことで、その過酷さは尋常ではないレベルにまで達した。
もちろん、サッカー競技は他の競技と比べ、熱中症対策をしっかりと取っている印象がある。現に今大会は前後半1回ずつ、3分間日影でスポーツドリンクやアイシングを受けられる“クーリング・ブレイク”が設けられ、それとは別に暑さの基準値を超えた場合、1分間の給水タイムが設けられてもいた。
水分補給はできるが、35分ハーフという試合で、実に4度も試合が中断することがあり、試合の流れがまるでバスケットボールのクオーター制(時間が4回に分割された試合)のようになり、サッカーという本質から離れてしまっているのも否めないのだ。