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内田篤人が語る鹿島復帰から半年。
「今の状況に満足してないから」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/08/01 08:00
右膝にテーピングを巻きながらも健在な内田篤人。その立ち居振る舞いから、鹿島の若手が感じるものは大きいはずだ。
下手にサボったりはできないから。
「複数のポジションをガンガンできるわけでもないのに、ベンチに入れてもらっているだけでもありがたい。だけど、俺はベンチでOKだとも思っていない。先発で90分……自分の身体が戻るまでどれくらい時間がかかるのかも分からない。これだけ長く、休んでいるサッカー選手はいないし。戻るのかもしれないし、そうじゃないのかもわからない。
でも、そこは辛抱強くやっていく中で、時間が解決するのかなって思っている。みんな見ているから。俺が、怪我で戻ってきてどういう態度で練習するのかなっていうのを。うちの若い選手もそうだし、下手したら日本中が見ているからね、下手にサボったりとかはできないから。今の状況をありがたいと思いながらも、こういう状況に俺はまったく満足していないから。身体と相談しながら……ね。ばーーっとしゃべったからもういい?」
空調のないミックスゾーン。時折ピッチから出口へと風が吹き抜けるとはいえ、暑い。そんななか、流れる汗を手でぬぐい、濡れたシャツを持ち上げ身体に風を送りながら、内田は一気に話した。
サポーターつける必要もないんだけど。
強い気持ちと、不安とが入り混じることもあるはずだ。そんな内田の心境が太もものサポーターの話から伝わってきた。
「試合中にサポーターが下がってくるから、位置を直してた。別につける必要もないんだけど、怪我したときに『ちゃんとつけていれば怪我しなかったかも』って思うのも嫌だからね」
数分間で語り尽くせるほど、シンプルな想いではない。けれど、現実と向き合うスタンスは単純だろう。
「受け入れる」「諦めない」「焦らない」。
そして、「信じる」。
それは、挑戦する人間にとって欠かせないものでもある。
そう、内田篤人も挑戦者なのだと改めて思った。
誰もが乗り越えたことのない山を征服するための挑戦。地図もなければ、ゴールの写真もない。ゴールがどんなものなのかさえわからない。それでも、挑戦はやめられない。