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「ユタカが上手い。それに尽きる!」
仏重賞制覇だけじゃない武豊の功績。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2018/07/27 17:00
武豊騎手がリステッドレースで騎乗したスーファは、スペインからの遠征馬だった。その騎乗依頼が来ることが一流であることの証だ。
ジェニアル以外に騎乗した3つのレース。
ところが蓋を開けてみると、終始先頭を走り、一旦はつかまったかと思えたが、再び突き放して勝利したのだから、皆が驚いたのは当然だろう。
フランスに何度もわたり、数々の経験をしてきた日本のナンバー1ジョッキーならではの好騎乗ではあったが、実は今回の遠征で秘かに驚かされた事が、他にもあった。
ジェニアルのレースばかりが脚光を浴びているが、今回の約1週間の滞在で、武豊騎手が騎乗したレースは他に3つある。
1つは一緒に海を越えていたラルク(牝5歳、栗東・松永幹夫厩舎)が走ったリステッド(準重賞)レース。こちらも道中はハナを切ったものの、結果は残念ながら8着に終わった。
また、翌23日にはシャンティイ競馬場で、ウィンヴィックという馬に騎乗した。この3歳馬は3着争いを演じたものの、叩き合いの末、短頭差の4着に敗れた。もっとも、2強と目され人気を分け合った2頭が1、2着でゴールしたレースだったので、武豊騎手はむしろ好騎乗と評価された。
ちなみに、この馬はかの地で開業する日本人の小林智調教師が用意した馬。彼は日本の牧場で働いていた頃に、「豊さんがフランスで騎乗するテレビ番組を観て、僕もフランスへ渡る事を決意した」という人物。
その後、調教師となった時には、「いつか豊さんに乗ってもらいたい」と語っていたもので、その後、願いは成就する。最近ではジョッキーが遠征する度に、何らかの騎乗馬を用意してくれる存在となっているのだ。
武豊だからこそ実現したコンビ。
そして今回、最も驚かされたと言っても過言ではないのは、もう1頭の騎乗馬だ。
ジェニアルが勝ったレースの1つ前に行われたリステッドで騎乗したのは、スーファという3歳の牝馬。全く人気もなく、結果は7着。これだけを聞くと特に注目されるような存在でないと思われるだろう。
しかし、私が驚いたのは、この馬がスペインからの遠征馬だったという点。管理するアルベルト・ソト・ローリング調教師は若手で、開業してからのキャリアも浅く、聞くところによると、フランスで修行した事はあるものの、馬を連れて来るのは初めてだったそうだ。
このような調教師から騎乗依頼が舞い込むとは、残念ながら、他の日本人騎手にはありえないことだろう。