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首位・広島に戻ってきた頼れる男。
千葉和彦「再び息子と歩くために」
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/07/27 10:30
森保一監督時代から広島の最終ラインを仕切る千葉和彦。その万能性はJリーグでも屈指だ。
手首の骨折でも走ることはできない。
同じ頃には「仕方ないです。(折れたのが)足じゃなかっただけ、よかったのかな」とも話していた。だが実際は、手首の負傷だからといって、すぐに走っていたわけではない。後日、あらためて当時のことを聞くと、「牛乳を飲んでいましたよ」と笑わせたのも束の間、「動かせる範囲が狭かったので、最初は走ることもままならなかった。できることはなかったです」と厳しい表情で振り返った。
右手首に負担をかけないように、当初は車の運転も禁じられており、自宅が近所のティーラシンの車に同乗させてもらい、練習場を往復した。室内でのバイク漕ぎから、屋外でのウォーキング、ランニングと、徐々にリハビリが進む一方で、広島は空前の勢いで勝ち点を伸ばしていく。
札幌戦に続き、浦和レッズと鹿島アントラーズをアウェーで下して開幕3連勝。引き分けを挟み、第5節からは5連勝を飾った。新しく城福浩監督が就任したチームは、J1残留争いを強いられた昨季からV字回復。開幕戦で千葉との交代で出場した野上結貴が加わった守備陣は、第9節まで失点わずか2という堅陣を誇った。
独走するチームを横目にリハビリ。
その後も順調に勝ち点を伸ばした広島は、2位以下がつぶし合ったこともあり、首位を独走。5月20日の第15節を終えて12勝1分け2敗の勝ち点37、2位のFC東京に勝ち点9差をつけて中断期間に入った。
その頃、千葉は屋外でボールを蹴るなど、リハビリも最終段階に入っていた。自分が不在の間に快進撃を続けるチームを、どう見ていたのか。5月下旬に語っていたのは、正直な思いと、それでも前を向こうとする姿勢だった。
「うらやましかったです。チームは勝ったときに成長するので、そこに自分がいられなかったことは、すごく残念。でも、終わったことを悔やんでも仕方ない。ここまで結構、長かったので、試合勘が戻るかどうか不安もありますけど、体は焦って、でも気持ちは焦らずにやっていきます」