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首位・広島に戻ってきた頼れる男。
千葉和彦「再び息子と歩くために」
posted2018/07/27 10:30
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph by
J.LEAGUE
2月24日、エディオンスタジアム広島で行われた、サンフレッチェ広島と北海道コンサドーレ札幌のJ1リーグ開幕戦。広島のDF千葉和彦は、自分と同じ背番号5の小さなユニフォームを着た息子を右腕で抱いて、ピッチへと足を踏み入れた。
広島では毎年、ホーム開幕戦とホーム最終戦で、先発メンバーが自分の子どもを連れて入場するのが慣例。昨年10月に誕生した第一子の息子を連れて入場するのは、千葉にとって初めての経験だった。開幕前の激しいポジション争いを経て勝ち取った先発の座に、新しく増えた家族の存在が華を添えていた。
前半にタイ代表FWティーラシンのゴールで先制した広島は、後半に入ると札幌の反撃を受けて劣勢を強いられる。何とか踏ん張っていた中で、千葉にアクシデントが起こったのは60分過ぎ。セットプレーの守備の場面で、ジャンプした際に混戦の中でバランスを崩し、右手からピッチに落下した。
「息子は重くなるから筋トレに」
「脱臼みたいになっていたので、自分で少し戻したんです。でも、手首のところがへこんでいて、ドクターが『骨折だ』と。とにかく尋常じゃない痛みでした」
そのままピッチを退き、2日後に広島市内の病院で手術を受けた。診断の結果は『右橈骨遠位端骨折(みぎとうこつえんいたんこっせつ)、右尺骨茎状突起骨折(みぎしゃっこつけいじょうとっきこっせつ)』。橈骨は前腕の親指側の骨、尺骨は小指側の骨で、2本とも右の手首に近い部分が折れており、全治3カ月と発表された。
負担が掛からないように、最初は右腕では息子を抱っこできなかった。「左腕だけで抱えようとするとバランスが悪いから、嫌がって泣くんですけど、無理やり抱いています」と語っていたのは3月上旬。努めて明るく振る舞い、「息子はもうすぐ5カ月で、だんだん重くなるから、筋トレにはもってこいですよ」と笑わせた。