欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
堂安律、その野望を大いに語る。
「ムバッペを引きずり下ろしたい」
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph byShigeki Yamamoto
posted2018/07/22 11:30
インタビュー中、朗らかな表情を見せる堂安律。その眼力は日本サッカーの主役を奪う意欲に満ちている。
ヨーロッパのやつらは突き放す。
――でもいきなり開幕からスタメンでした。
「今の僕からみれば、あの時はまったくチームに馴染めていなかったんです。僕に対しての信頼もないから、ボールもこない。やっぱりボールが来る回数がぜんぜん違いますね」
――よく言われる嫌がらせとか、舐められているような感じですか?
「いえ、舐めてるというよりも、こいつにパスするなら自分で行ったほうがいいという選手としての直感的な考えですね。あいつらはそれを嫌がらせとは思ってないです。自分が成長したいんです。だから律に預けて、走って、パスが返ってくるなら自分も生きるって考える」
――それがわかると振る舞いやすくなりそうですね。
「そうなんです。だからこそ練習で、おれはできんねんぞってところを見せつける。そうしないと信頼されないから」
――それは日本でステップアップするためにしてきたこととはだいぶ違うんですか?
「違いますね。日本だったら、監督やコーチは自分にフォーカスして教えてくれます。でもヨーロッパのやつらは完全に突き放すので。試合で使われへんようになったら、もう勝手にどっか行ってくれって感じやから。
そうなった時に自分に足りないものはなんなのか、監督が僕に期待しているものはなんなのか、というのを考えられるかどうか。見つけられなければ監督に聞きにいく必要もある。僕は開幕戦のあとに、4、5試合出られないことが続いて、その時は苦しかったですけど、監督に聞きに行った。反骨心みたいなものを持ってほしいとも監督は言っていましたね」
――その時に指摘された課題とは?
「お前は得点を取るタイプの選手なのに、シュートが少ないと言われました。相手の背後に行く回数ももの足りないと。やっぱりつい足元、足元で受けちゃうから。でもシュートも裏に走る動きも意識次第で変えられます。だから、意識を変えて練習中に見せつけて、というのを繰り返していました」
――そうすると、また試合でチャンスが来たと。
「そうなんです。すぐ使ってくれました。僕が完全にポジションを取りきったのがその時だったので、『ああ、こうやって上のヤツらを引きずり下ろしていくんやな』っていう感じを初めて味わった。この3カ月、4カ月は苦しかったけど、これから生きるだろうと思っています」
――Jリーグからオランダリーグへ行って、他にどんな違いを感じますか?
「考え方がだいぶ違いますね。やっぱり育成の国と言われているぐらいで、ミスが許されているリーグだと思います。それに、うちのチームなんて全員が居残りするぐらい練習量が多い。そこで若いやつらはバチバチにやりあい、削り合っています。毎日のように監督が『おまえら、明日試合だからもう練習やめろ』って居残りを止める。オランダに行ってから明らかに練習量が増えました」
――欧州へ移籍して、逆に自主練ができなくなったという例も多いですが、クラブによって違いますね。
「よくそう言いますよね。でもフローニンゲンは逆。いつも、もうやめろと言われてから、それでもみんなラスト5球、ラスト10球ってやってます。とことんサッカーに向き合える、いい環境に行けたなと思います」