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アンチェロッティがナポリを変える。
ユーベのロナウドと師弟対決も。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/07/20 17:00
昨年9月にバイエルンを解任された後、去就が注目されていた。現役時代はMFとして、ローマとミランでスクデットを獲得している。
アンチェロッティの勝利の哲学とは。
ただし、強くはなったが、勝者にはなれなかった。
アンチェロッティは、5年前のレアル時代に出版した自著『IL MIO ALBERO DI NATALE』の中で、トップレベルにあるチームを率いるポイントをいくつか挙げている。
「監督が使う主語はつねに“Noi(我々)”。だが、ほぼすべての選手たちの頭にあるのはつねに“Io(俺が)”という自己主張だ」
「一流プレーヤーに発破をかける必要はない。トップレベルにあるチームに最大のポテンシャルを発揮させるには試合への入念な下準備とムード作りが重要」
どんな国のビッグクラブにも複数のライバルがあり、直接対決の前にはテンションが高まるのが常だが、名将は「チームが気負い過ぎないよう抑えるのも大事だ」とも説く。
ロンドンでもマドリードでも強烈な個性を持つ選手たちをまとめ上げてきた。名将の言葉には確かな重みと説得力があり、その静かなカリスマが新天地での補強戦略と新チーム編成にも大きな効果をもたらしている。
名将の電話で主力たちが残留を決意。
今夏の移籍市場で、ナポリには戦力ダウンが予見されていた。ここ数年の躍進で欧州中から高い評価を受けるようになった主力たちに高額オファーが届けば、予算規模で劣るナポリは抗し難い。
守護神レイナはすでにミランへ移籍した。司令塔ジョルジーニョの新天地はチェルシーになった。主将ハムシクを初め、慕っていた前任者サッリの退任をチームサイクルの潮時と考えた選手は少なからずいた。
プレミア行きが噂されていたベルギー代表FWメルテンスは、W杯前にアンチェロッティから直々に電話をもらった。チームに残る意志を問われた彼は新監督の覚悟を悟り、「もう一度イタリアでタイトル獲得に挑む」と心晴れやかだ。
中国超級リーグ行きがほぼ決まりかけていた主将ハムシクも名将からの電話で移籍を翻意し、「アンチェロッティとならナポリはもっと強くなる」と士気を新たにした。