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アンチェロッティがナポリを変える。
ユーベのロナウドと師弟対決も。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/07/20 17:00
昨年9月にバイエルンを解任された後、去就が注目されていた。現役時代はMFとして、ローマとミランでスクデットを獲得している。
実績がありすぎて危うく過去の人に?
昨季序盤にバイエルンから解任された当初、アンチェロッティは現場復帰を必ずしも焦っていなかった。
母国イタリアから代表監督への勧誘は絶えることがなかったし、いずれ再挑戦したいと願うプレミアリーグの強豪の椅子もいずれ空くだろう、という考えもあった。
ところが、現代サッカー界における時間と人材の流れは予想以上に急ピッチで、意気盛んで野心溢れる若手や中堅指導者が次々に台頭してきた。
別荘のあるカナダでのんびりしている間に、彼は若くしてすべてを勝ち取ってしまったために、自らが“過去の人”扱いされ始めている兆候に気づいた。実績があり過ぎるがゆえに高年俸の招聘条件もクラブに二の足を踏ませる。
アンチェロッティはまだ代表監督の座に収まる気がない以上、一刻も早く現場のベンチへ復帰するべきだ、という危機感を抱いた。バイエルンで得ていた20億円近いサラリーはナポリでは半分以下になってしまうが、CLへの出場は確約されているし、四半世紀以上も絶えているスクデットを南部イタリアにもたらすという挑戦は、あらゆるイタリア人指導者の琴線に響くものだ。
ナポリのシュート数はユーベ以上。
“タイトル請負人”はナポリをどんなチームに仕立てあげるのか。
昨季、ナポリはクラブ史上最多となる勝点91を得ながら、ユーベに及ばず2位に甘んじた。
カンピオナートを通じて、20クラブ中最も多い548本ものシュートを放ち、やはり最多となる317本を枠内に打ち込んだ。FWインシーニェはリーグの誰より多い151本を蹴りこんだ。
指揮官サッリによる機動攻撃サッカーは、リーグ最長となる1試合平均31分53秒のボールポゼッション時間を実現。叩き上げの戦術家サッリに鍛えられた3年間で、ナポリは間違いなく一段階上の強さを手に入れた。