ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
夢のオールスター同行記。失意の
中田翔を救った熊本のおばあさん。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/07/20 11:00
8年連続8度目の出場となった中田翔は第1戦、全パの4番として先発出場したが、第1打席の死球で交代。熊本の第2戦は出場しなかった。
鉄道の長旅で第2戦の地・熊本へ。
前途多難の船出だった。中田選手は試合開始直後に、死球を受けて途中交代。大事には至らなかったが、緊迫感に包まれたまま第1戦が終了した。好救援した宮西選手が勝利投手の栄誉をつかんだことだけが、少し空気が和む朗報になった。
翌日、鉄路の長旅。8時に大阪市内のホテルを出て新大阪駅へ。新幹線に乗り込み、座席に身を預ける。選手とマネジャーの本隊より早い便で、トレーナーと2人で先乗り。博多駅で乗り換え、第2戦の地・熊本へと向かった。
博多からは阪神タイガース勢と、同じ車両。堂々とした体躯の糸井選手とメッセンジャー選手のオーラに、行楽へ向かうと思われる家族連れの方たちの空気も変わる。熊本駅に到着すると、改札口にはスター選手たちを一目見ようと詰め掛けたファンの方々の人だかり。もちろん、お目当てではない私たち2人はサラリと雑踏を抜け、熊本市内の宿舎へとチェックインしたのである。
後発の選手たちとホテルで合流し、いざ球場へ。前夜に負傷した中田選手を案じつつ、ラストの第2戦である。エース格の活躍でチームを牽引する上沢投手が6回から登板予定。トレーナー、マネジャーと強く無事を祈る。
試合前には、パ他5球団の広報の方々と記念撮影。球団公式インスタ用に、中田選手と熊本出身のモノマネ界の大御所コロッケさん、昨シーズンまでの盟友だったオリックス・バファローズ増井選手と宮西選手らの2ショットを収め、小さな満足感に浸る。試合では近藤選手が2安打、珍しく緊張していた上沢投手も無難に2イニングを投げ切る。遠く熊本まで駆けつけたマスコットのフレップ、ファイターズガールを交え、選手たちと集合写真を撮影。無事に2日間のフィナーレを迎えたのだ。
駅構内で「あんた、中田さんよね?」。
そして、解放感に満ち満ちた熊本の夜である。前職、日刊スポーツ新聞社西日本の仕事仲間だった記者たちと一献。皆、セ・リーグ担当で日ごろは再会の機会が少ないメンバーと旧交を温め、オールスターはジ・エンドである。
翌日。鉄路、新幹線さくらで大阪へと舞い戻る行程。出場した4人と一緒である。選手最年長の宮西選手が、車内でのランチをご馳走してくれた。熊本駅構内にあるファストフード店で、みんなで思い思いのメニューを選んでのテークアウトにした。
その待ち時間のことである。まだ激痛が残る中田選手が突如、肩をポンポン叩かれる。振り向くと推定70代、見ず知らずの女性が微笑んでいる。我らが主砲の顔を、下から覗き込んでいる。
「あんた、中田さんよね?」
それは、それは、底抜けに優しい熊本訛りだった。