インスタ用の写真撮影などの任務を。

　その日、近藤選手は約2時間後に同じホテルで日本プロ野球選手会の総会に出席する予定だった。そのまま滞在して時間を潰すことを選ばず「少しでも体を休めたいです」との希望で再び、一緒にチーム宿舎へと戻った。こんな時に、選手に想像を絶する蓄積疲労があることを知る。全4選手、無事にオールスターをフィニッシュすることを祈ったのである。

　午後2時。ただ1人、試合以外で稼動がなかった宮西選手とチーム宿舎から京セラドームへと乗り込んだ。パ・リーグのベンチは一塁側。通常時に使用するビジター三塁側とはレイアウト、勝手も違う諸室に戸惑いながら居場所を探す。パを率いる福岡ソフトバンクホークス工藤監督に、華のあるスター選手たちが既に舞台裏に居並ぶ。スター選手ばかりの壮観なロッカールームは、やはりお祭りである。

　雰囲気に圧倒されながら、練習等を終了した。もちろん脇役の中の脇役、陰の存在である小職。課せられた重要任務の1つは、球団公式インスタグラム用の写真撮影である。プレースタイルから推察していた通り、ナイスガイであった千葉ロッテマリーンズ石川選手にお願いし、上沢選手との2ショットを撮影するなどして任務完了。さて、本番である。

「翔、HR2本ってないやろ」

　時系列を羅列してきたが、本稿も本番である。ファイターズの先陣を切ったのは中田選手だ。ファン投票選出されたホームランダービー。最高潮のエキシビションである。対決方式で、相手は横浜DeNAベイスターズ筒香選手。親交が深い、若き左のスラッガー。持ち時間3分間、フルスイングし続けて何本スタンドインできるか。過酷な戦いである。

　中田選手は「ゴウ（筒香選手の呼称）か……」と戦前からやや消沈気味だったが、勝負は蓋を開けるまで分からない。しかし結果は無情、2－9の完敗である。

　一致団結、大声援のファイターズ勢。先輩の宮西選手が「翔、2本ってないやろ」とブラックジョークで笑いに変えてくれたのが、救いではあった。汗びっしょりで「マジ、キツい」と奮闘した中田選手を含めて皆、肩を落としたのである。

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