ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
夢のオールスター同行記。失意の
中田翔を救った熊本のおばあさん。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byKyodo News
posted2018/07/20 11:00
8年連続8度目の出場となった中田翔は第1戦、全パの4番として先発出場したが、第1打席の死球で交代。熊本の第2戦は出場しなかった。
「どうしても熊本の試合は出たかった」
驚いた中田選手が「そうですけど……」と、うなずく。その女性は体をさすり、軽く握手を求めて去っていった。
実は、心残りが1つあった。中田選手は昨オフ、人知れず熊本を訪れていた。2年前の地震の爪痕を、目に焼き付けるためである。死球の影響で第2戦は打撃練習も回避し、欠場を余儀なくされた。試合前、ポツリとつぶやいていた。
「オレ、どうしても熊本の試合は出たかったんよ。去年、まだ仮設住宅に住んでいる人とかと会って、いろいろ思うところがあったからさ。だから、この試合だけは出たいと思っていた。悔しいな、ホンマ」
同行させてもらったオールスター。ハンバーガーの出来上がりを待つ間に生まれた、最後の数秒。失意の中田選手は救われた。我々、周囲はほっこりとした空気に包まれた。
盛夏には、やはり熱いストーリーがマッチするのである。