プレミアリーグの時間BACK NUMBER
イングランドのW杯が久々に熱い!
PK戦の呪いを解く8強で英雄扱い。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Imges
posted2018/07/07 07:00
進撃のイングランドを率いるガレス・サウスゲイト監督。スーツの着こなしなども注目を浴びる敏腕指揮官だ。
サウスゲイト監督が掲げる新指針。
チームの第1目標はグループステージ突破で、識者を含めて国内も「ベスト8に残ってくれれば……」という控え目なものだった。しかし8強進出のみならず、イングランド復活に向けての「進歩の跡」が確認されたからだ。
ここ近年のイングランドは国際大会で低迷続き。ブラジル大会と2年前の欧州選手権で国民を失意のどん底に叩き落とした。しかしガレス・サウスゲイト率いるチームは明らかに違う。
サウスゲイトは、キャリア晩年でお鉢が回ってきたロイ・ホジソンや、調子に乗っておとり取材にハマった前任のサム・アラダイスとは違い、自身の代表監督就任だけで満足してなどいなかったのだ。
47歳の指揮官は、平均年齢26歳のチームと進化を遂げる意気込みを持ち、プランに沿ってロシア大会を戦っている。
大事にしているのは目先の結果ではなく、アイデンティティの確立。ポゼッションベースの攻撃的スタイルを植え付けている。若手の積極起用、3バックの採用などリスクを厭わずにプランを敢行している。
否定的な意見はベストの着こなしだけ。
ハリー・ケインら8名を先発から外したベルギー戦では、一部メディアに「せっかくの勢いを損なう」と批判されたが、続くコロンビア戦での勝利で、さらなる勢いを生み出したのも確かだ。
就任当初は、FA(サッカー協会)幹部の「イエスマン」と見る向きもあったが、W杯で「確固たる意志を持つ監督」との見方が定着した。
唯一否定的な意見は采配ではなく、ベストの着こなしについて。
リバイバルに火をつけたとして評価されているが、時折ボタンを全部閉めているのはNGだとか(一番下は閉めないのが正解らしい)。
選手たちもサウスゲイトの信頼に応え、W杯を通して成長の跡を示している。コロンビア戦前、指揮官は選手たちに最も求めるものを訊かれて「レジリエンス」、回復力や抵抗力だと話した。選手はその「屈しない力」を見せて勝利をもぎ取った。