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貴乃花親方と村田諒太の対談全文。
強さ、身体感覚を極限まで求めて。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/07/09 07:00
貴乃花親方と村田諒太。肉体をぶつけ合う競技に挑む2人だからこその身体感覚がある。
努力ほど裏切るものもないじゃないですか。
村田 ある意味で、お父さまが神様として宿っているんですね。僕の場合は、全然実践できていなくてバチが当たるくらいですが、その信仰心の元は、高校時代の恩師(武元前川氏)です。特にもう亡くなったということもあって。人から見たら宗教か、と言われるくらいかもしれませんが、そういう精神がやっぱりあるんですね。恩師から言われたことで『努力したからって報われるわけじゃない、でも努力しないと報われない』という言葉があって。みんなが報われるわけじゃないけれど、やっぱり努力しないとうまくいかない。届くか届かないかわからないけれど、ジャンプし続けることが大事かな、と今も思っています。
貴乃花 それ、うちの親父もおんなじことを言っていました。努力しても報われないけど、努力しないと意味がないと。
村田 努力したからって、努力ほど裏切るものもないじゃないですか。
貴乃花 それは、本当に経験のある指導者の方しか言えないことですね。凄い話です。今自分が子どもにそう言えるかといったら、言えないですもん。
村田 僕もとても。お父さん努力したらチャンピオンなっちゃったわ、ゴメンな、ってなもんで(笑)。
子どもには、同じ苦労はしないでと。
貴乃花 血を分けた子どもには、同じ苦労はしないで、とやはり思いますしね。
村田 頼むからボクシングだけはしてくれるな、と思ったり、でもちょっとやってほしいと思う気持ちもありますし。
貴乃花 私はやはり、親父が大関だったので、お父さんが一番頼もしいんだ、強いんだ、と見ていたのに、なんで横綱になれないんだ! という気持ちが芽生えて。それがなければやっていなかったでしょうね。
村田 なんでしょう、仇討ちのようなお気持ちだったんでしょうか。
貴乃花 そうでもないんです。もともと親父は水泳の選手で、バタフライの中学記録なんかを持っていたらしいんです。私が子どもの頃数回だけ一緒に旅行に行って、プールで泳いだら、まさに水を得た魚で。それが突然力士になった人だったんです。だから、親父が続けていたら、私も水泳をやっていたかもしれない(笑)。
村田 それでも成功していそうです(笑)。しかし、それこそ運命だったのかもしれませんね。道が変わって相撲に行かれて、貴乃花さんに継がれて。