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貴乃花親方と村田諒太の対談全文。
強さ、身体感覚を極限まで求めて。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/07/09 07:00
貴乃花親方と村田諒太。肉体をぶつけ合う競技に挑む2人だからこその身体感覚がある。
あぁ疲れた、という時に意外と。
貴乃花 肩の力が抜けて。
村田 こいつパンチがあるからやだなあ、もういいよ……あ、ボディ空いてる、と思ってストレートを打ったら相手が『ウッ』となって。あ、効いてる? なんて。
貴乃花 それも普段の鍛錬ですよね。咄嗟の閃きというか。勝負所って、そんなことが多いですよね。
村田 一生懸命一生懸命やってきて、最後に、あぁ疲れた、ちょっと抜こうかなと思ったときに、意外といいものが出たりする。
貴乃花 相撲も15日間相手が違って、皆持ち味が違うんです。それで、こちらが強くなればなるほど、たとえ14日間負けていても今日の一番を勝てばいい、と向かってきてくれる。そこでいかにして自分の力を発揮するか。しかしチャンピオンとなると、挑戦者も世界中から来ますもんね。
村田 そ、そうですね。でも一つひとつやっていくしかないかなと。僕は最初、オリンピックがボクシング人生のゴールだと思っていて。22歳で、大学卒業と同時に北京オリンピックの出場がかなわなくて、一度引退しますと。約1年の引退状態から23歳で復活して、26歳で金メダルを取って、そこでまた引退、と思ったんです。ここで本当に終わりだと。
でも結局そこがスタートで、32歳の今もやっている。不思議なもんですよね。だからあまり先々想像して、理想みたいなものを立てるより、一つひとつやっていけばその都度ステージが見えてくるかなと思って。今は年齢とかは決めずに、いつかはイヤでも辞めなきゃいけないんだから、やりきろう、という気持ちです。
身体、肉体の限界と引退のタイミング。
貴乃花 本当ですよ。我々の業界の引退も30歳くらいでしたが、今は延びました。
村田 貴乃花さんが引退されたのは?
貴乃花 私は30ちょうどでしたね。
村田 それは身体が限界だったんですか。
貴乃花 精神的なものもキツかったですね。もういいや、と。ケガも増えていたし。指を脱臼すると、自分のまわしを取る相撲に指が使えない。そこにまた肩を脱臼したりして。ケガとは無縁だったのに、どんどん誤魔化しが利かなくなっちゃったんです。
村田 確か、貴乃花さんの上にゴーンと乗っかられて、大ケガをされた相撲がありましたよね。相手はどなたでしたっけ。
貴乃花 雅山さんですね。柔道技みたいな投げで。そういう技を自分が食ってしまうとは想像もしなかったのが、これはもういかんなと。それで上に乗られて、肩が外れてしまったんです。ああもう取れないな……と思っていたら、審判協議で物言いがついて取り直しになったんです。でも取り直す以前に、所作で片手が上がらない。いやオレ、無理だよ……と思いながら(笑)。それはもう引退間近でしたね。