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<引退ドキュメント>山中慎介「左拳で伝えてきたこと」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byTsutomu Takasu

posted2018/07/18 15:00

<引退ドキュメント>山中慎介「左拳で伝えてきたこと」<Number Web> photograph by Tsutomu Takasu
 世界バンタム級王座12度連続の防衛記録を残して、今年3月に名ボクサーがまた一人、リングを去った。
 絶対的な武器「神の左」の境地に辿り着くまでの文字通り血の滲む努力の日々を振り返った。

 引退会見から3カ月が過ぎても、山中慎介の“御礼回り”は続いていた。

 応援してくれた後援会、知人、友人、スポンサー……携帯電話にあるスケジュール表はびっしりと埋まっている。律儀な一面が、人から愛されるゆえん。現役を終えたのに後援会も継続の見込みだという。

 ありがたいことですよね。

 しみじみと話す彼の表情も身体も、引き締まったまま。時間を見つけて今もロードワークだけは欠かしていない。

 セカンドキャリアは「ゆっくり考えている」段階で、トークショーやボクシングの解説の仕事はこなしている。5月25日にはジェイミー・マクドネルに1回TKO勝ちした井上尚弥のファイトを、実況席で見届けた。引退から間もないうちにまばゆいリングを見てしまうと、復帰したくなる衝動に駆られるという元世界王者の話を聞いたことがある。それをぶつけてみると、彼は頷いた後で首を軽く横に振った。

「その気持ち、分からなくはないです。井上選手は正直、凄いなと思ったし、輝けるリングに上がれるのはうらやましい。でも僕自身ボクシングに未練があるかって言われたら、そうじゃない。練習も、試合も現役も、思う存分やってきましたから」

 スッキリと、サッパリと。もはや闘う男の顔に戻ることはなかった。

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