英国人記者も驚いた…中谷潤人なぜ大苦戦？「パンチが効かないなんて…」井上尚弥戦へ改善すべき“悪癖”「ナカタニは時々、リスクを取りすぎる」

　サウジアラビアで挙行された井上尚弥対アラン・ピカソ戦での井上は判定ながら完勝し、パウンド・フォー・パウンド（PFP）1位への返り咲きの可能性も話題になり始めている。

　この興行のセミファイナルには中谷潤人（MT）も登場した。スーパーバンタム級での初戦となった中谷はセバスチャン・エルナンデス（メキシコ）に3-0判定勝ち。ただ、この日まで20戦全勝（18KO）のメキシカンのラッシングパワーに苦しみ、終盤は追い詰められるシーンも多かった。32戦全勝（24KO）と無敗の戦績を保ったものの、「ドローか、負けていたのでは」という声も少なくなかった。

　この戦いをどう評価すべきか。そして来春、井上戦に向かうのは適切な方向性なのか。リングマガジンの編集人を務める英国人ライター、トム・グレイ氏に意見を求めた（以下、グレイ氏の一人語り）。

井上尚弥PFP1位は持ち越し

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　ベストの出来ではなくてもトップコンテンダーに完勝してしまうのがイノウエの凄さだ。彼は自分自身に非常に高いスタンダードを課している。その基準で考えると、ピカソ戦の後で、リングマガジンのPFPランキングで現在2位につけているイノウエが1位に推される流れにはならないだろう。

　私はムロジョン・“MJ”・アフマダリエフ戦のイノウエの方がピカソ戦よりも良かったと思っている。理由は、1ラウンドから12ラウンドまで一貫していたからだ。名古屋では本当に美しいボクシングをしており、ピカソ戦のように緊張感が落ちる瞬間はなかった。だからといってイノウエが衰えたのではなく、その日の感覚、状態がゆえにそうなったのだと思う。

試合後、「疲れました」と本音を漏らした井上尚弥　©︎Hiroaki Finito Yamaguchi

　パウンド・フォー・パウンドでイノウエに対抗できる存在は、1位のオレクサンドル・ウシクしかいない。そしてイノウエはウシクよりもはるかに精力的に試合をこなしている。ウシクは今年、ダニエル・デュボアと1戦しただけだ。だから『イノウエこそが世界最高のファイターだ』と言う人がいても、私は反論も否定もしない。しかし、リングマガジンのPFPランキングの選定委員の中で、ピカソ戦の勝利をもってイノウエが1位に上がると主張する人が出てくるとは思わない。

　そうなる可能性があったとすれば、序盤でKOし、度肝を抜くような内容だった場合だけだった。結局のところ、ピカソはボクシング界で広く知られた存在ではないからだ。イノウエの1位再浮上の機会は、来年5月の次戦に持ち越しになったのだろう。

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