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天皇杯は物語を喚起する舞台装置。
新潟・大谷幸輝と高知・横竹翔の絆。
text by
大中祐二Yuji Onaka
photograph byAlbirex NIIGATA
posted2018/07/05 10:30
移籍1年目だった新潟で降格を味わった大谷幸輝。このまま終わっていいと思っているはずはない。
異なるカテゴリーだからこその醍醐味。
一方の大谷は、浦和レッズから加入した昨シーズン、新潟のレギュラーGKを務めたが、今季はフラメンゴから加入した元ブラジル代表GKアレックス・ムラーリャの控えに回っている。試合出場のチャンスをつかもうと、トレーニングで自分自身と向き合う日々である。
9年ぶりに新潟に復帰したジェルソンGKコーチの下、現在、取り組んでいるのは動きすぎず、最後まで我慢して、そこからパワーを爆発させてセーブに行くプレーだ。さらに、肉体改造にも取り組んでいる。プロ11年目で、体重を落とそうと思ったのは初めてのことだ。
「シーズンの初めより3、4kgは落ちていますね。より動けるようになったら、自分のプレーがどう変わるかな、と思って。試合に絡めていない分、何かを変えないと」
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ジェルソンGKコーチの求める“動かないゴールキーピング”をマスターするために、動ける体になる。そのアプローチは、果たしてどういう実りをもたらすか。
この試合の記録だけを追えば、取り立てて耳目を引くような結果ではないかもしれない。J2の新潟が、3つカテゴリーが下の高知を攻めあぐね、PK戦の末に何とか3回戦に進出。
ただし、そういう枠組みではとらえ切れないストーリーが、そこにはあった。異なるカテゴリーのチーム同士が対戦する。だからこその物語を喚起する装置としての天皇杯。新潟は7月11日の3回戦で、FC東京と対戦する。今度は自分たちがアップセットを起こす側になる。