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元フロンターレ井川祐輔の香港挑戦。
「裏海外組の凄さを知ってほしい」
posted2018/07/09 17:00
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
Kawasaki Frontale
2018年6月30日、川崎フロンターレで“最強の宴”とも称されるファン感謝デーが行われた。川崎らしい遊び心あふれるイベントに、1人の元フロンターレ戦士が登場した。
昨季までクラブに所属していた井川祐輔だ。
川崎に12シーズン在籍後、2018年から求めた新天地は日本では馴染みのない香港リーグのイースタンSCだった。そこで半年間プレーした井川は、来季もイースタンに所属することをサポーターに報告した。
かつて岡田武史体制下の日本代表に招集された経験を持つ35歳のDFは、なぜ香港に新天地を求めたのか。そして今後のプランは――。
その想いを余すことなく語ってくれた。
優勝は嬉しかったけど、悔しさも。
――川崎の最終シーズンとなった1年はどんなことを考えていたんですか?
「一昨年の夏場に左足の後十字靭帯を損傷してしまって、リハビリ明けで2017年に臨みました。ただ、シーズン序盤の(ACLの)広州恒大戦に出場した時に右足の内側靭帯を断裂してしまった。
その時にもうオレは引退なのかなと思いましたね。また膝のリハビリを経験しないといけないのか、35になる自分の年齢を考えて、引退がよぎるというか、担架で運ばれてロッカールームで1人になった時、悔しさと絶望感というのがありました。しかも中国という地でしたからね(苦笑)。薄々は『今年でフロンターレも終わりかな』という思いを抱きながら、リハビリとトレーニングに励んでいました」
――その一方でチームはJリーグで優勝しました。難しさはありましたか?
「結局、そのシーズンはJリーグで1試合も出られなかった。ただ、12年間在籍して優勝というものに手が届かなかった悔しさは、(中村)憲剛の次に味わっていると思っているので“優勝はしたい、でも試合にも出たい”という葛藤の中にいました。
優勝は嬉しかったんですけど、見ていて悔しさも同時に抱いていましたね。ただピッチに降りて、憲剛と言葉を交わした時に、自然と涙があふれて号泣してしまった。悔しいという思いより嬉しさが勝っていたんだなと、改めて気付かされた瞬間でした」
――そこから現役にこだわることに意識が変化した理由とは?
「やっぱり諦められなかったからですね。単純にサッカーが好きだからだし、妻が妊娠していて、その子に頑張っている姿を見せたいなという思いもありました。やはりこの形で現役を引退するのは納得できなかった。現役にこだわりたいという思いが、段々と大きくなりました」