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「辞めることになったから」川崎F・鬼木達50歳が息子に“監督退任”を伝えた日「顔を見合って号泣です(笑)」番記者が初めて聞いた“家族の話”

posted2024/12/05 17:01

 
「辞めることになったから」川崎F・鬼木達50歳が息子に“監督退任”を伝えた日「顔を見合って号泣です(笑)」番記者が初めて聞いた“家族の話”<Number Web> photograph by Masashi Hara/Getty Images

川崎フロンターレに多くのタイトルをもたらし、今季かぎりで監督を退任する鬼木達。残す試合は12月8日のJ1最終節のみとなった

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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Masashi Hara/Getty Images

 10月のある日、鬼木家の夕食中でのことだった。

「言ったら?」

 突然、妻である麗子さんからそう切り出された。

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 予想していなかったひと言に、「えっ、このタイミングで?」と鬼木達監督は完全に意表を突かれたという。

「全然、言う気はなかったんですよ。もう少し、ちゃんとしたタイミングにしようかなと思っていたので……」

 少しだけ苦笑いを浮かべて、そう明かした。

 何を言うつもりだったのか。それは、自身の退任だった。

次男が無言で流した涙…“鬼木家の食卓”の情景

 8シーズンにわたって指揮していた川崎フロンターレの監督を、今季限りで退くことが決まっていた。夫人にはすでに伝えていたが、公には未発表で、息子たちにも自分なりに考えていた適切な頃合いに伝えるつもりだった。

 だから、夕食の場で夫人から唐突にその話題を切り出されたことに、思わず動揺してしまったのである。

 鬼木監督には2人の息子がいる。

 長男は現在大学生で、次男は高校生だ。このときの食卓にいたのは次男だけだった。夫人から促されたこともあり、その場にいた次男に自身の退任を伝えることにした。

「辞めることになったから」

 父親の言葉の意味を、次男はすぐに理解した。ただ、その後の反応が意外なものだった。

 胸の中で込み上げるものがあったのだろうか。その場で沈黙すると、涙を流しながら食事を続けたという。

 鬼木家の食卓には、静かな時間が流れていた。その場にいた3人ともが、抱えていた感情を抑え切れなくなっていたからだ。鬼木監督が回想する。

「それでこっちも泣いてしまって。そこから、みんなで顔を見合って号泣です(笑)。息子が小学生の頃から(自分が)監督というものをやっていて、それをずっと見ていたからなのか、思うところもあったんでしょうね」

【次ページ】 「こんな僕でも誇りに思ってくれるんですね」

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#鬼木達
#川崎フロンターレ

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