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平日は会社員、週末になると審判員。
元甲府DF御厨貴文が“プロ”に再挑戦。
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph byIsao Watanabe
posted2018/07/04 16:30
試合をさばかれるJリーガーから、さばく審判に。御厨貴文のサッカー人生は今も続く。
平日は選手の進路相談、土日は審判業。
現在はキャリアサポート事業部の一員として「定時の帰宅や土日に休む権利を手にしようとするなら、それだけの成果を仕事で出すよう言われています」と、平日はデスクワークに加え、各クラブや企業をまわっての現役選手への研修、引退選手への進路相談、求人企業への人材紹介に携わっている。
自身の経験を基にJリーグの新人研修会で講師を務めたり、合同トライアウトの運営を担ったりすることもあった。社業が終わると、ジムワークやランニングといったトレーニングに励み、土日は審判業に勤しんでいる。
'15年の暮れに、東京都サッカー協会が主催する試合を担当することのできる3級審判員の資格を、'16年10月には関東サッカー協会が認定する2級審判員の資格を取得。現在は週末になると、社会人の関東サッカーリーグや関東大学リーグの試合で、笛を吹いている。
W杯には審判界のメッシやロナウドが。
「さすがに日本代表の試合は応援モードですけど、いまではW杯を観るときも、気がつけば審判の動きを眼で追っていますね。あの舞台に立つレフェリーたちは選手と同じように、厳しい予選を勝ち抜いて選抜された各大陸の代表です。つまり審判界のメッシやクリスティアーノ・ロナウド、超絶天才たちが集まっているんです。自分のような駆け出しが、あれこれ語れる次元ではありません。それを大前提に感想を述べさせてもらうなら、あのレベルになると、皆さんどんな重圧にも負けることがない。それだけの根拠と裏付けがあるんでしょうね。
それとゲームマネジメント力がすごい。アクションのひとつひとつで、何をメッセージとして伝えようとしているのかが、すごく分かりやすい。選手はもちろん、スタジアムに来た観客、テレビの前の何十億人という視聴者、誰が見ても理解できる。そして、そういう動きは美しいんですね。僕が主審をしている映像を見ると、なんか動きがセカセカしていて汚いんです。ああいうところは真似しようにも、ちょっと真似できないですね」
ゲーム中のジャッジ以外に、円滑な試合運営のために審判が多岐にわたる作業をしていること。選手経験がなくとも猛勉強をして審判資格を取得した多くの一般の人たちが、日本サッカーの裾野を支えていること。同じサッカーのフィールドにいながら、選手時代には気づいていなかったことがたくさんあった。