ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
メッシに脅迫で試合中止、主力離脱。
アルゼンチンは混乱を越えてW杯へ。
text by
藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia
photograph byGetty Images
posted2018/06/16 08:00
代表チームではなぜかタイトルに恵まれないメッシ(右)。4度目の出場で悲願達成なるか。
「メッシの命に関わると判断した」
アルゼンチン国内では、会場が決まった直後から国際情勢を懸念した外務省がAFAに警告し、会場の変更もしくは試合の中止を促していたが、AFAはすでにマッチメイクのエージェント会社から報酬300万ドルを受け取っていたこともあり、試合を強行する姿勢でいた。
しかしネット上ではメッシが脅迫され、パレスチナサッカー協会会長がアルゼンチン代表のユニホームを燃やすように呼びかけ、終いにはキャンプ地にパレスチナ擁護団体が押しかけてメガホンで親善試合に反対するシュプレヒコールを挙げる始末に。日に日に過激化する抗議姿勢に、メッシをはじめとする選手たちが身の危険を感じないはずはなく、結局、試合の4日前にAFA側がキャンセルを要請する形で試合は中止となった。
この決断を受け、一時はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、試合開催を求めてアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領に仲介を依頼するという複雑な問題に発展しかけたが、最終的には在イスラエル・アルゼンチン大使館が公表した「メッシの命に関わると判断した」との声明によって、それ以上の騒ぎには至らなかった。
メッシの相棒候補ランシーニも離脱。
とはいえ、AFAが適切な判断を下さなかったために選手たちに無駄な心労を与えたばかりか、危うく外交問題にまで発展しかねなかったことについては国内でも非難の声があがり、サンパオリは事前に予定されていた貴重なテストマッチの機会を失うこととなってしまったのである。
さらに、ピッチ外の予期せぬ騒動に振り回されたチームに止めを刺すかのように、サンパオリのチームは不運にももう1人の選手を負傷で欠くこととなった。
攻撃のキーマンとなるはずだった、MFマヌエル・ランシーニだ。
ランシーニは3月に行なわれたイタリアとの親善試合でのパフォーマンスが良く、リオネル・メッシのパートナーとして重要なポジションを勝ち取り、サンパオリ監督の構想において不可欠とされていた。それだけに、アイスランド戦を8日後に控えた時点でのランシーニの離脱は、チームにとって大きな痛手となるだろう。