ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
メッシに脅迫で試合中止、主力離脱。
アルゼンチンは混乱を越えてW杯へ。
text by
藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia
photograph byGetty Images
posted2018/06/16 08:00
代表チームではなぜかタイトルに恵まれないメッシ(右)。4度目の出場で悲願達成なるか。
ロメロの妻がSNS上で監督らを糾弾。
だが、トラブルが発生したのはロメロの欠場が決まった後である。ロメロの妻でグラビアモデルでもあるエリアーナ・ゲルシオが、明らかにサンパオリ監督と代表スタッフに対する抗議として、SNS(ツイッター)に「無能な者どもの疑いのせいでエキスパートが代償を払うことになる」と書き込んだのだ。
エリアーナによると、ロメロの怪我はW杯を欠場するほどの重傷ではなく、2週間で完治するものだという。つまり、その時点で開幕戦には十分間に合ったらしい。にもかかわらず、「無能な者ども」は明確な診断を下せず、その代償としてエキスパート、つまりロメロがW杯欠場という「代償」を払わされたという抗議だったのである。
しかもその後、ロメロ自身も「自分は出場できると確信していたのにサンパオリが許可しなかった」と、監督に対する不満を堂々と述べたことが各メディアで大きく取り上げられることに。チームがバルセロナで事前キャンプに打ち込んでいる間、国内のニュース番組ではロメロとその妻による「反撃」ばかりが取り沙汰されていた。
イスラエル戦がキャンセルになる不手際。
それだけではない。9日に予定されていたイスラエルとの親善試合の会場がエルサレムになったことで、パレスチナから激しく抗議を受け、AFA(アルゼンチンサッカー協会)が直前になってキャンセルするという失態を演じてしまった。
W杯前にイスラエルと試合を行なったことが'86年大会の優勝を呼び込んだというカルロス・ビラルド元代表監督のアイデアから、アルゼンチンはその後'98年まで3大会連続して直前に同国と対戦して縁起を担いでいた。科学的根拠のない迷信にすがりつく習慣はマルセロ・ビエルサ監督時代に終わったはずだったが、奇しくもAFAがクラウディオ・タピア新会長によって生まれ変わった今、再び甦った。
マッチメイクされた当初は会場が定められておらず、首都テルアビブになる可能性が高いとされていた。しかし、その後イスラエル側が渦中の街エルサレムに決定。当然パレスチナは猛反対し、世界中に試合中止を呼びかけるため、リオネル・メッシを格好の標的とし、幼い子どもたちを使って「メッシよ、どうかパレスチナ人の墓場の上に作られた血まみれのスタジアムでプレーしないで」と訴える形でアピールし始めた。