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大谷翔平を2奪三振で抑えた
田中将大のプライドと貫禄。
posted2018/05/30 18:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
AFLO
表情ひとつ変えないところに、ヤンキース田中将大のプライドがにじんだ。
田中が求めたのは、結果だけだった。相手の打者を1人ずつ抑え、チームに勝ちを呼び込む。思考は、極めてシンプルだった。
5月27日、ヤンキースタジアム。
日本だけでなく、米国ファンも注目した「田中対大谷」の対戦が実現した。当初は、「投手大谷」との投げ合いも見込まれていたが、エンゼルスが先発ローテーションを修正。大谷の登板が変更となり、「打者大谷」としての出場が決まった。
田中への声援と大谷へのブーイングが交錯する中、1回表2死一塁で迎えた第1打席。マウンドから大谷の動きを見つめる田中に対し、大谷はヘルメットのつばに手を当てたが、それはあくまでも主審に対してのあいさつに過ぎなかった。
打席内の足元をならし、黒バットを掲げるまで、田中とは一切、視線を合わせようとしなかった。田中にしてみても、日本人対決、先輩・後輩の関係など、周囲の視線は無関係だった。
「彼だけじゃないんでね」
「戦いの場において、それは別にどうでもいいんで、こっちも気にしなかったですし、という感じです。お互い、真剣にやりあう時に、そんなのは必要ないんで」
杓子定規でも、きれい事でもない。相手が誰であろうと、マウンドに立つ以上、相手打者を抑えにいく姿勢を変えるつもりはない。メジャー5年目を迎えた田中は、世界最高峰の舞台に、情や感傷を挟む余地のないことを熟知していた。
4月27日、敵地アナハイムで行われたエンゼルス戦の試合前には、大谷との対戦について、率直な思いを口にしていた。
「本当に申し訳ないですけど、彼だけじゃないんでね。注目するのは彼との対決だっていうのは分かっていますけど。その周りにいいバッターたちがいますから。もちろん打たれたくない気持ちは変わらないし、全力で抑えにいきます」
田中にとって、「打たれたくない」「全力で」との気構えは、大谷に対してだけではない。むしろ、大谷との対決に注目が集まれば集まるほど、田中は冷静に客観視しているかのようだった。