プレッシャーを感じるようになったのも名球界以後。

「野球殿堂」は、記者の投票で選出される。その基準は時代によって動くし、不明瞭な部分もあるが、「名球会」の入会資格は「2000本安打」といたって明瞭だ。それもあって「2000本安打＝名球会」は広く知られるようになり、打者にとっても「最終目標」になったのだ。

　今年の内川聖一のように打者がプレッシャーを感じるようになったのもそれからのことだ。

　阪神の藤田平（15人目、1983年5月3日、後楽園の巨人戦、9回表に角三男から左前打）は、「（相手の王助監督に花束を渡されて）最高の気分です。名球会というのができて、阪神ではバッターで誰もいないから、いっちょうやってやろうじゃないかと思いました」と言った。

　同じ年の阪急、福本豊（18人目、1983年9月1日、西宮球場のロッテ戦、4回裏、田村勲から中前適時打）は、中軸打者でない選手が達成したことに胸を張った。

「（一塁で喜びを爆発させ）なぜそんなに喜んだって？　それは打者としても世間から認められるからや。1年でも長く1本でも多くヒットを打って、ブレーブスのために頑張ります」

清原「本当は豪快な本塁打で決めたかった」

　ミスターロッテ、有藤通世（20人目、1985年7月11日、川崎球場の阪急戦、6回裏に星野伸之から左二塁打）は、「冥土に持っていく」とまで言った。

「前の2打席は力が入ってバットが出てこない。やけくそで高めの球を打ってやった。この二塁打はプロ入り初安打のホームランと一緒に、冥土に持っていきます」

　巨人、清原和博(31人目、2004年6月4日、神宮球場のヤクルト戦、1回表にべバリンから中前打)は、この年あと18本で開幕を迎えたが、巨人にペタジーニが入って出場機会が減り、こうコメント。

「18本が、180本にも感じていた。一発の男らしく、本当は左翼席への豪快な本塁打で決めたかった。でも打撃の基本はセンター返し、そう意味では2000本にして原点に戻った感じです」

　日本ハムの田中幸雄（35人目、2007年5月17日、東京ドームの楽天戦、4回裏に山村宏樹から右前打）は、その清原に励まされた。

「（2000本目を）きれいなヒットで飾れて幸せな男。こみ上げるものがあって、抑えるのに必死だった。清原さんに“絶対打てよ、ええもんや”と言われてがんばった」

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