セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
異論承知で言う、MVPはブッフォン!
史上初7連覇ユーベのみが持つ強さ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2018/05/16 11:30
'01年からユーベに在籍しているブッフォン(中央)。9度のセリエA優勝と共に、スクデット剥奪、2部降格も味わっている。
「サッカーはファンタジーなんだよ」
話題はプレーする者も観る者も楽しめる高機動パスサッカーで、スクデットまで後一歩に迫ったナポリとの比較論だった。アッレグリは時折声を上ずらせながら、これこそが年に一度タイトルを手にしたときにだけ口にする私の本音なのだ、と言わんばかりに熱弁を振るった。
「いいプレーだとか悪いプレーだとか、そんなものは相対的なものでしかないんだよ。今のサッカーはどうもロジックで語ろうとしすぎている。うまく説明できないが、本当のサッカーってものは口や文字で説明できないことがたくさんあって、それこそが大事なんだと私はつねづね思っている。旧き良き時代の監督たちが伝えていたことに私は深く同意しているんだ。サッカーはファンタジーなんだよ」
もし、彼が単に勝ち点3だけを追求する指導者であったら、4連覇という偉業は達成できていなかったかもしれない。
「毎年チームは変わる。ライバルも戦況も刻一刻と変わる。それに合わせるのが大事だ」
アッレグリの発言には「自分が好むサッカー」「自分がやりたいサッカー」という言葉が出てこない。
“自分のサッカー”を押し付けない。
彼は“自分のサッカー”を押し付けたりしない。彼が「サッカー」と口にするとき、それはもっと大きなサッカー全体のことを見据えている。
指揮官アッレグリにしても、主将ブッフォンにしてもこの連覇の間、彼らは“タイトルを守ろう”などとは露ほども考えていなかった。前年と同じことのくり返しやすでに良しとされることへ迎合しようとしないからだ。
興味深いことに、アッレグリと選手たちはシーズン中にナポリのことを称賛こそすれ、彼らを“スクデットへの直接のライバルだ”と発言したことはほとんどなかった。
つまるところ、ナポリはカンピオナートでの真の敵ではなかった。
ユベントスの面々は、鏡に映った自分たちのアイデンティティとのみ戦っていた。稀代の名将と不世出の鉄人という2大巨頭が手綱を引いていた王者ユベントスにとって、本当の敵とはユベントス自身しかいなかったのだ。