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ネイマールがパリで王様になっても、
ロナウジーニョほど愛されない理由。
posted2018/05/17 11:00
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
2005年5月1日、アルバセーテ戦のアディショナルタイムだった。
バルセロナのリオネル・メッシが、記念すべきプロ初ゴールを挙げたその瞬間のカンプ・ノウが、まるで新たな王子の誕生を祝うかのように、とても幸福で温かな空気に包まれていたことを覚えている。
カンプ・ノウという大きな母体から産み落とされた王子がメッシなら、さしずめロナウジーニョはそれを優しく取り上げた産婆さんだろう。心憎いばかりのループパスでゴールをお膳立てしたロナウジーニョが、背番号30のユニホームを産着がわりにしたメッシを抱きかかえるのではなく、ひょいとおんぶして祝福したシーンが強く印象に残っている。
ロナウジーニョと同じマジシャンだが。
この時、ロナウジーニョは25歳。超人的なテクニックと天真爛漫な笑顔で、在籍2シーズン目にしてすっかりバルセロニスタを虜にしていた極上のエンターテイナーは、それから半年後のクラシコで、宿敵レアル・マドリーのサポーターをも感服させる。
意のままに左サイドを切り裂き、衝撃的な2ゴール。セルヒオ・ラモスをぶっちぎり、イケル・カシージャスの壁をやすやすと破ったロナウジーニョを、敵地サンティアゴ・ベルナベウの観衆がスタンディングオベーションで称えた光景は、あまりにも有名だ。
では、同じブラジル人で、負けずとも劣らない稀代のボールマジシャンでありながら、現在26歳のネイマールが、当時のロナウジーニョが集めていたような称賛と敬意を勝ち取れないのはなぜだろう。
ノールックパスに股抜き、つま先でボールを蹴り上げて相手をかわすシャペウに、外から内へ急激にボールの方向を変えるエラスチコ。
同じ技を繰り出しているのに、ロナウジーニョが拍手喝采を浴び、ネイマールが「相手チームを愚弄している」と批判の対象となるのはなぜだろう。