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ネイマールがパリで王様になっても、
ロナウジーニョほど愛されない理由。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byGetty Images
posted2018/05/17 11:00
PSGで余裕のタイトル獲得となったネイマール。彼の頭にある未来はパリでのさらなる躍進か、それとも?
カバーニやムバッペの得点を喜べるか?
まだ19歳だったメッシが、ハットトリックの大活躍を演じた'07年3月のクラシコ。その2点目のゴールが決まった時、激しく何度も拳を振り下ろし、まるで我がことのように喜びを爆発させていたロナウジーニョの姿を思い出す。
今のネイマールは、例えばエディンソン・カバーニやキリアン・ムバッペのゴールを、こんな風に心の底から喜べるだろうか──。
今年2月に右足の第5中足骨を骨折し、ブラジルで手術に踏み切ったネイマールが、ようやく5月4日にパリへと戻ってきた。
しかし、リオ郊外の豪華な別荘で、昼はリハビリ、夜は友人たちとポーカーゲームに興じる日々のなかで、ネイマールはPSGでプレーすることへの興味をすっかり失ってしまったようだ。
PSGでの戦線復帰よりもW杯を重視。
自分のいないチームがチャンピオンズリーグから姿を消しても、4月15日に5節を残してリーグ・アン優勝を決めても、それから約2週間後にウナイ・エメリ監督が今シーズン限りでの退任を表明しても、まるで他人事のように反応は鈍かった。PSG側の見立てでは、シーズン中の復帰も十分に可能だったが、しかしネイマールにその意思は微塵もない。彼の頭にあるのは、ロシア・ワールドカップに向けて万全のコンディションを整えること、それだけなのだ。
「レベルの低いリーグ・アンでどれだけゴールを重ねても評価はされない。バロンドールを手にするには、もはやワールドカップでセレソンを世界チャンピオンに導くしか方法はない」
そんな心の声が聞こえてきそうだ。
20試合で19ゴールを挙げ、今シーズンのリーグ・アン最優秀選手に選ばれたネイマールだが、その栄誉も一顧だにしないのだろう。
1年でパリを去り、来シーズンはレアル・マドリーかマンチェスター・ユナイテッドでプレーするという噂も、馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばせない。飽きたオモチャを簡単に放り出してしまうようなネイマール自身の幼児性と、欲にまみれた取り巻き連中の存在が、信憑性をかさ増しするからだ。