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ケンブリッジ飛鳥のアリゾナ修行。
新フォームで織田記念に帰ってくる。
posted2018/04/28 07:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Ayako Oikawa
「僕はほかの日本代表の選手たちのように、高校や大学でトップだったわけではないんです。いつもチームに僕よりも速い人がいて、彼らの背中を追いかけて。でも、『いつか勝ってやる』と思いながら練習してきた。でも今の練習環境にはそういう選手はいないので、じゃぁ海外に行こうかな、と思ったんです」
ちょっと意外だった。確かにケンブリッジは、インターハイも全日本インカレも優勝経験はない。しかし大学時代からその才能を認められていた。「トップだったわけではない」という気持ちを持っていたことに驚かされた。
おっとりとした口調のなかに強い意志とハングリー精神が感じられた。
海外志向が強く、ボルトのチームでも練習。
昨年11月、ケンブリッジはアリゾナ州フェニックスにある陸上チーム「ALTIS (オルティス)」の門を叩いた。
同チームにはリオ五輪100m、200m、400mリレーのメダリストで自己ベスト9秒91のアンドレ・ドグラス(カナダ)、昨年のロンドン世界陸上100mセミファイナリスト、400mリレー金メダルで、自己ベスト9秒96のCJ・ウジャ(英国)、ロンドン世界陸上200m5位のアミア・ウェブ(米国)などが所属。練習相手に不足はなかった。
ケンブリッジは以前から海外志向が強く、日本大学時代には、自身の出身地でもあるジャマイカのウサイン・ボルトが所属するチームで練習したこともある。
大学時代からケンブリッジを指導する渕野辰雄コーチも、ケンブリッジの挑戦を後押ししてくれた。「『たくさん学んでこい』と送り出してくれました」と笑顔で話す。
昨年は、アメリカで迎えた初戦で追い風参考ながら9秒台を出したほか、ダイヤモンドリーグ上海大会、セイコーグランプリなどで世界のトップ選手と競い、経験を積んだ。
6月の日本選手権は予選で10秒08の自己ベスト。準決勝でも組1位となる10秒10。決勝は足に違和感があったものの粘りの走りで3位に入り、ロンドン世界陸上の代表権をもぎ取った。