メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
イチローより年下の監督が次々登場。
MLBで強権型指導者はもう流行らない。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2018/04/28 09:00
42歳のアレックス・コーラは、いまにもグラウンドへ飛び出していきそうな雰囲気で試合を見つめている。
リスペクトと、冷静な視線。
一方、メッツのミッキー・キャラウェイ監督は、現役の時にヤンキース時代の松井秀喜と対戦したことがあるものの、1年間メジャーでフル出場したことはなく、韓国や米独立リーグでも投げた苦労人だ。
2013年、インディアンスの投手コーチだった頃、松井との対戦については「あまり良く覚えていないんだ」と正直に言いつつも、当時マイナー契約からのメジャー復帰を目指していた頃の松坂のことについて訊くと、こんな風に率直な意見を述べる人だった。
「僕もベテラン選手としてメジャーで生き残る戦いをした経験があるから、彼が満足できるパフォーマンスをして、メジャーに残ることができればいいと思っている。
でも、この戦いは簡単じゃない。むしろタフな戦いになるだろう。なぜなら、この組織は若い先発投手を育てようとしているし、実際に数多くの才能ある投手がマイナーからメジャーに定着しようとしているところだからね」
マイナーで開幕を迎えた松坂にエール。
当時のインディアンスには、元レッドソックスで松坂の同僚だったジャスティン・マスターソンとウバルド・ヒメネスが2枚看板。残る3つの枠を、のちにサイ・ヤング賞を2度も獲得し、先の対戦で大谷翔平に2号本塁打を許したコーリー・クルーバーや、ドジャースの先発左腕リッチ・ヒル、松坂と同じく怪我からのメジャー復帰を狙っていた左腕スコット・カズミアー、今は先発2番手を務めるトレバー・バウアー、貴重な中継ぎ投手として活躍するザック・マカリスター、現ヤクルトのデイビッド・ハフらが争っていた。
誰がどう考えても激戦必至である。だから、松坂が傘下のマイナーAAA級コロンバスで開幕を務めることが決まった後、キャラウェイもこう言うしかなかった。
「開幕をメジャーで迎えた選手たちの怪我や不調など、何がチャンスになるか分からない。下で投げ続けていればそういう運にも恵まれることがあるから、あきらめずに頑張って欲しい」
結局、そのチャンスはやってこず、松坂はメッツでメジャー復帰を果たすことになるが、当時から彼はコーラ同様、選手へのリスペクトをうまく表現することのできる人だったと思う。