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イチローより年下の監督が次々登場。
MLBで強権型指導者はもう流行らない。
posted2018/04/28 09:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
シーズン序盤の順位や成績など、劇的に変わる可能性があるのでアテにはできない。
アテにはできないが、ア・リーグとナ・リーグ両方の東地区で首位を快走するレッドソックスとメッツがいい野球をしているのは確かだ。
レッドソックスは昨季も東地区を制してポストシーズンに出場しているので、現時点で首位に立っていることに何の違和感もない。メッツも一昨年まで2年連続でプレーオフ進出を果たした地力は残っていたので、それほど驚きはない。
驚かされるのは、その2チームを今季から率いているのが、44歳のイチローよりも若い42歳の青年監督であるという事実だ。
レッドソックスのアレックス・コーラ監督は、現役時代に野茂英雄や松坂大輔といった――世代を超えた――日本人選手のチームメイトだったこともある元内野手だ。現役生活は14年と長いが控え選手だった時代が長く、活躍の場も6球団に及ぶ。
2016年の冬、プエルトリコの冬季リーグを取材に行った時、地元出身のコーラが視察に訪れていた。奇しくもその日は当時福岡ソフトバンクで一軍復帰を目指していた松坂の登板日だった。ガラガラのネット裏で、こんなことを言いながら笑っていたのを思い出す。
「現役時代に一緒にやっていた選手がこんな風にプレーしているのを見ると、俺はなんでこっち側にいて野球を見ているんだろう? なんて思うこともあるんだ」
「外側から野球を見ていろんなことを学んだ」
こっち側――。当時、彼はすでに翌2017年からアストロズのベンチコーチになることが決まっていた。
「でも僕は現役を引退した後、外側から野球を見ていろんなことを学んだし、その経験を生かしてアストロズの若い選手たちが成長する手助けをするのがとても楽しみなんだ」
まさかベンチコーチ1年目でワールドシリーズ優勝を経験するとは思わなかっただろうが、去年は青木宣親(現東京ヤクルト)がアストロズにいたお陰で頻繁に顔を合わせることが多く、彼が話す言葉の端々に、選手に対するリスペクトが感じられた。
「ノリ(青木)は常に打撃のことを考えているし、少しでも良くなるためにいつも練習している。そういう姿を見て刺激を受けない選手はいないし、このチームの若い連中もなにか感じるところはあるんじゃないかな」