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ゴロフキンに村田諒太は敵うのか。
最強王者に打ち砕かれた2人の証言。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byAFLO
posted2018/04/22 11:30
38戦37勝1引き分け、33KO。圧倒的な実績を誇るゴロフキンと、村田諒太が同じリングに上がる日は来るか。
「ゴロフキン、完全に切りにきてたよ」
「前半のラウンドで切る選手が多い。見えなくなってからどんどん詰めていく。試合のあと、ジムのマネージャーにも言われてたんです。『完全に切りにきてたよ』って」
血で視界を奪い、間合いを詰め、鈍器のような拳で襲う。淵上の目に、それはボクシングとは別のものに見えた。
「仕事をこなしてるような感じ。だから最初は劣勢でも一切焦らない。段階を踏んでいけば君を最終的には倒せるよって、そんなふうに見えるんですよね」
自身が拠りどころとしてきた信念に、例外を加えざるをえなかった。
「ボクシングはやってみなきゃわかんないって思ってやってきたのに、いやいやゴロフキンだったら何があっても負けないでしょっていう認識を持っちゃってますね。勝って当たり前。事故も起きない」
暫定王者の肩書を得た石田順裕の挑戦。
現在は「寝屋川石田ボクシングクラブ」の経営者となった石田順裕は、珍しいキャリアを踏んだボクサーだった。早くからアメリカに意識を傾け、試合が決まると海を渡って強い相手とスパーをこなした。'09年には暫定ながら世界王者の肩書も得た。
マッチメイカーたちにその名を知らしめたのは、'11年4月、MGMグランド・ガーデン・アリーナでの一戦だ。「闘魂」の鉢巻き姿で登場した長身の日本人は、27戦全勝のジェームス・カークランドに突撃して112秒で試合を終わらせた。
以降、実力者たちとの対戦が組まれ、負けはしても善戦を重ねた。だからこそ'13年3月、連続防衛回数を6、連続KO数を12に伸ばしていたミドル級王者に挑む権利を与えられた。石田、37歳の大一番だ。