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比嘉大吾の減量失敗はなぜ起きたか。
「体重は落として当たり前」の声も。
posted2018/04/17 17:15
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
WBC世界フライ級チャンピオンで15連続KO勝利の日本タイ記録を持つ比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)が14日、秤の上で王座を失った。
日本ボクシングコミッションによると、日本人選手が世界タイトルマッチで計量失格になるのは初めてのこと。翌15日、横浜アリーナの試合は行われたものの、比嘉はランキング2位のクリストファー・ロサレス(ニカラグア)に9回1分14秒TKO負けに終わった。
こんなに力ない比嘉を見たのは初めてだった。スタートからロサレスの攻撃を受ける場面が多く、パンチを当てても、いつものように相手を下がらせることができない。
それでも圧倒的に負けていたという内容ではなかった。9回が始まって1分すぎ、離れた両者の間に主審が進み出て、ふいに試合を止めた。何が起きたか一瞬分からず、多くのファンがあっけにとられたのではないだろうか。試合が終わった理由は、比嘉陣営が棄権を申し出たからだった。
やるせなかった横浜の夜。
比嘉は前日の計量でリミットの50.8キロに900グラム及ばず、王座をはく奪された。汗が一滴も出ない状態で、昼をまたいで数時間の減量に励んだが、体重はまったく落ちずにギブアップとなった。
こうした事情があり、具志堅会長は最初から「(コンディションが悪ければ)2ラウンド、3ラウンドで止めることも考えていた」という。最終的には8回終了時の公開採点(79-73、77-75、76-76)でリードを許していることを知り、具志堅会長が決断をくだしたという。
比嘉は試合後、野木丈司トレーナーに抱きかかえられるようにして控え室に引き返した。「本人は話ができる状態ではない」と取材に応じた具志堅会長によると、比嘉は試合後、「ごめんさない」と言葉を絞り出し、泣きじゃくったという。
本来なら今回の試合は、連続KOの日本記録更新、尊敬する故郷の大先輩、元世界王者の浜田剛史氏を超える快挙を成し遂げるはずの試合だった。それが計量失格により暗転、見ているほうも、やっているほうもやるせない横浜の夜となったのである。