One story of the fieldBACK NUMBER

年齢を重ねることで手に入れたもの。
タイガース福留が語る対菅野の裏側。 

text by

鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

PROFILE

photograph byKyodo News

posted2018/04/20 07:00

年齢を重ねることで手に入れたもの。タイガース福留が語る対菅野の裏側。<Number Web> photograph by Kyodo News

開幕から5番レフトでスタメン出場している福留は4月18日現在、打率3割1分3厘、2本塁打、7打点。キャプテンも担っている。

ポーカーフェースの裏で待っていた球種。

 試合後、あの外のストレートを福留は待っていたのではないか、そう言う関係者もいた。

「いや、あそこは、駆け引きはしていない。そう見えたのかもしれないけど。ただ、次の打席は少ししたかな……」

 続く3回の第2打席、福留は、初球、インコースにきたストレートに全く反応しなかった。表情も体もピクリともせずに見送った。ただ、ポーカーフェースの裏では、こう思っていたという。

「インコースに真っすぐを突っ込んできたけど、全然、反応しないよという素振りをわざとした。ただ、内心では『次、まっすぐこい、まっすぐこい』って思ってた」

 そして、相手バッテリーがもう1球続けてきたストレートをまんまとセンター前にはじき返した。この回も、それをきっかけに大山が2ランで追加点を奪っている。

 誰もが不安と緊張を抱える開幕ゲームで、最初のストライクを大胆に振っていける。相手の裏をかく駆け引きをする。こういった力が40歳という年齢になった福留を支えている。

若者至上主義のプロ野球界で。

 今シーズン開幕時点で、40歳以上の現役選手は7人いて、そのうち開幕一軍に名を連ねたのは5人だ。中にはオープン戦で結果を出したにもかかわらず、同じポジションの若手を優先するということで開幕二軍スタートとなった者もいる。

 育成に重きが置かれる、“若者至上主義”の時代にあって、ベテランたちの立場は厳しくなっている。

 ただ、タイガースにおいては金本知憲監督が開幕戦を迎える前に「糸井か孝介が放り込んでくれれば……」と36歳と40歳に期待したように、選手をはかる「物差し」は必ずしも年齢によらない。誰もが横並びに重ねていく数字ではなく、数字に表れない力も合わせて判断される。そして、そういう絶対値で測れない力を福留は証明したのだ。

 開幕戦に勝利した後、福留の後ろで、2安打した糸原はこう言った。

「いつもそうなんですが、今日も、相手が福留さんにどういう配球をするのか、それをどう打っていくのかは注意して見ていました」

【次ページ】 若い頃はなくて、40代の自分にあるもの。

BACK 1 2 3 NEXT
#阪神タイガース
#福留孝介
#菅野智之

プロ野球の前後の記事

ページトップ