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平川忠亮、浦和の最年長出場更新。
親友の怒りと大槻暫定監督の指令。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/10 11:00
土田尚史GKコーチ(左)、大槻毅暫定監督(中央)から送り出される平川忠亮。苦闘の浦和にあってその存在は大きい。
もう一度選手として戦う覚悟を。
プロサッカー選手として自らを評価してくれる人がいる。ピッチでプレーする意欲をなくしたら、「選手」という肩書は外さねばならない。同じ立場を担って、そのうえで仲間を支える。池端の言葉を聞いて、平川の内面に新たな感情が芽生えた。
「イケちゃんの言うとおりかもしれないな。俺、選手だもんな」
感情を露わにしたのが恥ずかしかったのか、池端が小さな声で言葉を返した。
「あのさ、最近俺のことを『イケちゃん』って呼ぶけど、ちゃんと陽介って呼んでくれる? 浦和に(柏木)陽介がいるから呼び分けてるのはわかるんだけど、なんだか納得いかない」
親友との邂逅は、もう一度選手として戦う覚悟をした、かけがえのない瞬間だった。
負傷再発も「俺が動揺してどうする!」。
2017シーズンの浦和は7月30日にペトロヴィッチ監督との契約を解除し、新たに堀孝史ヘッドコーチを新監督に据え、Jリーグは7位に留まったものの、ACLではクラブ史上10年ぶり2度目の優勝を成し遂げた。新体制発足後の平川はベンチ入りや出場機会が増え、その立場も変化した。
昨季末に新たに契約を更新した彼は、2018シーズンに向けてこんな抱負を述べている。
「チームを結びつける団結という名の糸が切れて、バラバラになりそうになったことなんて何度もある。いつだって危機はやってきて、その集合体が崩壊する可能性を孕んでいる。でも、そんな厳しい局面を乗り越えるための尽力は監督やコーチだけがするものじゃない。同じ集団の一員である選手ももちろん、その努力を惜しんではならないんだ」
しかし、選手の思いとは裏腹に、堀監督率いるチームは今季開幕から低空飛行を続けた。リーグ戦で未勝利が続き、YBCルヴァンカップでもわずか1勝しか挙げられない。チームが苦境に陥ったとき、平川は足をケガして別メニューを強いられていた。
早く復帰しようと焦りを募らせて負傷を再発させたときは「俺が動揺してどうする!」と自らを叱咤した。しかし、結局チームに浮上のきっかけはなく、堀監督は今季公式戦わずか7試合で契約解除の憂き目にあった。