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平川忠亮、浦和の最年長出場更新。
親友の怒りと大槻暫定監督の指令。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/10 11:00
土田尚史GKコーチ(左)、大槻毅暫定監督(中央)から送り出される平川忠亮。苦闘の浦和にあってその存在は大きい。
三都主獲得にたぎった頃と違った感情。
選手としてピッチに立ち続ける欲求を捨て、監督の思いを汲んで陰から仲間を支えようと思った。最年長選手として、自らの存在価値はそれしかないのだと達観した。
「若い頃はポジションを奪われたらムカついて、『絶対に奪い返してやる』って思っていた。左サイドでプレーしているときにクラブがアレックス(三都主アレサンドロ)を獲得してきたときには『俺のことをそんなに信用してないの?』とも思った。でも30代も後半を迎えた今、そんな感情はなくなったよ。俺に与えられた役割は十分理解しているつもり。今は、その責任を果たしたい」
しかし、平川の想いは結果に反映されなかった。2017シーズンの浦和は突如守備が崩壊して成績が低迷し、約5年半続いていたペトロヴィッチ監督体制のチームは結成以来最大の危機を迎えた。
ある日のオフ。平川は気分転換を兼ねて、ひとりの同期の下を訪ねた。清水商業高校(清商/2013年3月31日に閉校)サッカー部で共にプレーした池端陽介である。
「清商で出会ってから今まで、ずっと関係が続いている。陽介は浜松市から越境で清水市(現・静岡市清水区)の清商に入学したから寮生活だったんだけど、学校が借り上げていた寮の陽介の部屋にはクーラーがなくて、アイツはいつも俺の実家に入り浸ってた。静岡の魚河岸で働いている親父は朝が早いから、夜中まで自宅で陽介と遊んでいると怒鳴られたりしてね(笑)。今となっては、それも良い思い出だけど」
「忠亮はさ、もう試合に出る気ないの?」
池端は沖縄の日差しを浴びて真っ黒に日焼けしていた。
清商を卒業してプロになり、サンフレッチェ広島、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、ヴァンフォーレ甲府などでプレーした彼は今、ふたりと同い年である高原直泰が代表兼監督兼選手を務める沖縄SV(九州サッカーリーグ所属)に在籍している。
互いの近況、沖縄のこと、懐かしい昔話、久しぶりの再会に話が弾む。そんな中、苦境に喘ぐ浦和のチーム状況に話が及んで、平川がふと、こんな言葉を漏らした。
「なんとかね、俺も裏からチームを支えられたらなって思っているんだけどね」
すると池端が、突然大きな声を発して反論した。
「忠亮はさ、もう試合に出る気ないの? プレーで貢献したいと思わないの? 今のようにチームが苦しい状況だからこそ、忠亮の力が必要なんじゃないの? 俺はさ、今のお前は浦和の選手として十分戦力になると思ってる。今だってお前は、お前が思っている以上に凄い選手なんだよ!」