野ボール横丁BACK NUMBER
プロ野球から智辯和歌山のコーチへ。
中谷仁が高校野球界で担う“役割”。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2018/04/06 11:15
プロ野球OBの高校野球参入が解禁されて以来、高校野球の流れは大きく変わってきた。中谷仁コーチもそれを担う1人である。
大会中、選手に激怒した事件。
そんな中谷コーチが大会中、激怒したことがある。国学院栃木戦の前々日、28日のことだ。2年生捕手の東妻純平に相手打線の特徴を言ってみろと尋ねたところ、「わかりません」と返答したからだ。
「思わず、『(和歌山に)帰れ!』いうてしまいました。こんなんで『打倒・大阪桐蔭』と言ってたら恥ずかしい。桐蔭とやったら、みっともない試合になる恐れがある」
相手校の攻略法は中谷が担当していたため、選手たちも中谷コーチに任せっきりになっていたのだ。それを機に中谷コーチは、選手たちにデータ分析を任せるようにした。
すると準々決勝の創成館戦、準決勝の東海大相模戦と、ともに10失点。神がかり的な攻撃力で両試合とも逆転勝ちしたものの、バッテリーには猛省を促した。
「監督は、口癖のように『うちの野球は守りの野球』と言ってる。これでは守っているとは言えませんから」
「いやいや、負けてますから」
それでも、決勝も中谷コーチは選手たちに任せた。すると、破壊力のある大阪桐蔭打線を5失点に抑えた。投手陣が疲労している中で、上々の出来だった。
「これが高校生なんやろうな。1日で急激に成長しよる。今日も打たれたことは打たれたけど、よう攻めとったわ」
――褒めてあげたいですか?
「いやいや、負けてますから。褒めるわけにはいきません!」
言葉の内容とは裏腹な表情で、そう言った。