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“異例”のタイミングでプロ宣言。
平野美宇、知られざる半年間の葛藤。
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph byKyodo News
posted2018/04/02 17:30
日本卓球協会の星野一朗専務理事からエリートアカデミーの修了証を受け取る平野美宇。
既にプロ化している石川佳純らも参考に。
「初めは驚いた」と言う宮﨑氏だが、最終的に平野の意向を受け入れたのは、今年から本格化していく2020年東京五輪の代表争いを見据えてのことだったという。
寮生活やJOCエリートアカデミー独自の学習プログラムなどの関係で、すでにプロ化している石川佳純(全農)、伊藤、早田ひな(日本生命/希望が丘高校)といったライバルたちに比べ、平野が練習時間の制約を受けていることは確かで、JOCエリートアカデミーとしても日本卓球協会としても「このままでは代表争いで遅れを取るのではないか? 本当に五輪出場、そして金メダルを狙えるのか?」という懸念があったと宮崎氏は語る。
優秀な中国人コーチの離脱も要因の1つ!?
もう1つ、平野の気持ちがプロ転向へ動いた背景には、2017年4月から、それまでの中澤鋭コーチに代わり練習パートナー兼コーチを務めていた張成氏が、同年の暮れに中国へ帰国するという出来事が影響しているのではないだろうか。
故郷にいる家族の事情があったと聞くが、この張コーチはまだ20代と若く、最近まで現役選手として中国でプレーしていたこともあり、世界最強の卓球王国の最新事情やプレーに精通していた。
平野にとっては頼もしい存在で絶大な信頼を寄せていただけに、彼女の喪失感はことさらに大きかったと見られる。
もちろんJOCエリートアカデミーとしても、所属選手全般を見る立場になっていた中澤氏を再び平野の試合に同行させベンチコーチに起用するなど、張コーチの抜けた穴を最大限カバーするよう努めてきた。だが、平野の気持ちは全日本選手権決勝での敗戦以降、プロ転向へと一気に加速していった。