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スアレスに殴られ蹴られて成長した男。
湘南スタイルの肝はアンドレ・バイア。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/27 11:00
湘南に所属して4年目。最終ラインを司るバイアは不可欠の存在だ。
スアレス、汚いんだ。ひじで殴ったり。
――いままででいちばん厄介だったストライカーは?
「ルイス・スアレス。ウルグアイのね。オランダのフェイエノールトにいるとき、アヤックスに所属していた彼と対戦したんだ。ウルグアイ人やアルゼンチン人は、敵がブラジル人となるとものすごく激しいプレーを仕掛けてくる。そこで勝ったり負けたりを繰り返すわけだけど、スアレスには何もさせてもらえなかった。汚いんだよね。ひじで殴ってきたり、何でもやってくるんだから」
――スアレス、やっぱりすごいんですね。
「もうひとりいるよ、手も足も出なかったのが。ロマーリオだ。プロデビューした17歳のときに対戦したんだ。それも、あのマラカナン・スタジアムで。試合前夜はほとんど眠れなかった。監督には“こう動いてくるから注意しろ”なんて言われたけど、成す術もなかった。まずマラカナンの大きさに圧倒されて、走り方すらよくわからないくらい舞い上がってしまったんだ。ロマーリオには、たしかハットトリックされたかな? 点数はよく憶えていないけど、とにかくやられた。ロマーリオもスアレスも、いまとなってはいい経験かな」
柔和な微笑みを浮かべながら包み隠さず失敗談を語るのは、若き日の失敗を糧にしてきた自負があるから。
歴戦の強者に殴られ、蹴られ、だまされながら、バイアはいいディフェンダーになった。この男なら、安心して財布を任せられる。