マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
2018ドラフトの稀少な捕手を発見。
スカウト注目の上武大・吉田高彰。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2018/03/25 09:00
近年、ドラフトにおける有力捕手の人気は上がる一方。吉田高彰も多くのチームが目をつけていることだろう。
辛口の谷口監督がベタ誉め。
早くから期待されて、上武大では1年からレギュラーマスクをかぶって、2年生では早くも日米大学野球選手権大会のメンバーに選ばれている。選手には辛口の谷口監督すらこう話す。
「ウチには珍しいキャッチャーらしいキャッチャーですよ。特にディフェンスに関して、ちゃんと根拠を持ちながら野球をやろうとしている。今の学生って、そういう大切なこと結構いいかげんじゃないですか。そんな中で、感心しますよね、吉田の取り組む姿勢は」
谷口監督にここまで誉めさせる選手も、もしかしたら初めてかもしれない。
試合前のシートノックで、アレッと思った。
低い送球が、二塁ベースの上に届く。そしてそれが、投げるたびに繰り返される。
スローイング、こんなに良かったっけ……。
確かに去年までも、悪くはなかった。しかし、強肩という印象まではない。そこに、新たに、「強肩!」という強烈な印象が加わった。これは大きい。強烈な印象、つまり特徴が出来たのだ。
ひと言で言い表せるのが、すぐれた選手だ。
上武の吉田? うん、スローイングは使える!
即答できる要素があれば、それがプロの資質だ。
二塁送球がことごとくベースの真上へ。
試合が始まる。イニングの初め、この日、9回の二塁送球でべース上を外したのは、わずかに2度だけだった。
捕球してすぐ、ボールを握った右手を右耳の場所に持ってきて、同時に低く腰を割る。もうこの時点で、ストライクスローが約束されているようなものだ。コンパクトな腕の振り、頭が動かないのもいい。
地を這うような送球軌道、それがベースの上に届くから二塁牽制でベースに戻った走者の足が一瞬早いかな、と見えても塁審が思わず手を上げてしまう。