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サッカースタジアムで最高の観戦席は?
PSGが誇る世界のセレブ垂涎のVIP席。
text by
オリビエ・ボサールOlivier Bossard
photograph byAglae Bory/L'Equipe
posted2018/03/25 08:00
この扉の向こう側には……究極のスタジアムVIP席が用意されています。
あるクラブの名物会長が、お忍びで観戦。
ベルナール・タピ(実業家にして左翼政治家、オリンピック・マルセイユ<OM>会長時代は1993年にチャンピオンズリーグ初制覇を成し遂げるも、バランシエンヌとのリーグ戦八百長事件が発覚しタイトル剥奪。自身もサッカー界を追われた)もまた思い出深い。
クラシコ(PSG対OM)のあった日曜の夜、チケットも招待状もなしにスタジアムに現われたタピは、セキュリティも難なく突破して貴賓席にたどり着いた。
ドラロシュブロッシャールが懐かし気に語る。
「招待リストには入っていませんでしたが、彼を止めることなど誰にもできなかったのです。
彼は私に誰からも見えない席を要求しました。だからこう言ったんです。『その柱の間に隠れていてください。すぐに何とかしますから』。
彼は笑いながら言われたとおりにして、一時は騒然としたけど何とか事態を収めることができました」
2015年のスタジアム改修は貴賓席中心だった。
2011年6月にクラブを買収したカタール財団(QSI)は、同時に大幅なクラブ職員のリストラも進めた。だが“パルクの婦人”(ドラロシュブロッシャールの愛称)に関しては、契約を6カ月間延長した。
「契約を少しだけ延ばしたのは、貴賓席の運営を引き続き任されたからで、VIPのリストを作成するのにそれだけの時間がかかったから、それだけですよ(笑)。QSIもまた、貴賓席がいかに重要なコミュニケーション戦略の場であるかをよく理解していたわけです。簡単には引き継げなかった、ということですね」
2015年にQSIは、7500万ユーロをかけてスタジアムを改修したが、その大半は政治家や実業家、著名人たちを最高の環境で招待するための“カレ”の改修に注がれた。クラブの元会長で、現在はスイスの日刊紙『ル・タン』でコラムを連載するシャルル・ビルヌーブはこう述べている。
「“カレ”はPSGの単なるパブリック・コミュニケーションの場ではない。それはカタールにとってのショーウィンドウであり、ソフトパワーを発揮する絶好の舞台なんだ」