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風間監督に“恩返し”した鬼木監督。
川崎vs.名古屋は今後も名勝負必至。
posted2018/03/21 08:00
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
今月8日、将棋の藤井聡太六段が師匠である杉本昌隆七段との「師弟対決」に勝利したことが話題となった。将棋界では師匠に勝つことを「恩返し」と呼ぶが、藤井六段はプロ入り1年半でそれを果たしたのである。
サッカー界でも、注目の師弟対決があった。
奇しくも藤井六段の地元・愛知で、だ。18日に行われたJ1第4節・名古屋グランパス対川崎フロンターレである。
名古屋を率いている指揮官は、風間八宏。
2016年まで約5シーズンにわたって川崎を指揮し、攻撃的なスタイルを築きあげた人物である。その風間の元でコーチを務めていたのが鬼木達だ。前任者のスタイルにさらなる上積みを加え、2017年にクラブ悲願となる初優勝を達成した。昨年は名古屋がJ2を戦っていたため、今回が初めてとなる師弟対決だった。
「目指しているものが同じようで違う」
実は、かねてから鬼木監督に聞いてみたい質問があった。
それは、チームのバトンを引き継ぐにあたって、風間監督から何か託されたメッセージがあったのかということだ。
凡庸な疑問かもしれないが、「師弟対決」を迎えるタイミングならば適切かとも思い、この試合に向けた囲み取材の場で尋ねてみた。
鬼木監督は「特別なことはなかったですよ」と前置きしたうえで、言葉を続けた。
「そんなに多くは語らないですけど、なんていうんですかね……風間さんがいつも話していたのは、自分の持っているものでやるということ。それは僕だけじゃなくて、いろんな人にそういう感じで伝えていたので、自分も自分らしさでやろうと思いました。それは去年1年で作り上げてきたつもりです」
王者に輝いた昨年の鬼木フロンターレに、前任者のエッセンスが色濃く残っていたのは、周囲も認めるところだろう。ただ監督として2年目を迎え、風間監督のスタイルについても「お互いに目指しているものが、同じようで違う」と話す指揮官の口からは、新しいエッセンスを加えている自負も感じられた。
「自分たちは自分たちで試行錯誤しながらやってきました。攻撃もそうだし、守備もそうですね。それをプラスアルファして積み上げてきたと思っているので、そこは見せられればいいと思います」(鬼木監督)