Jをめぐる冒険BACK NUMBER
アジア王者浦和に何が起こっている?
“最適解”を探して崩れたバランス。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2018/03/17 17:00
数多のサポーターがスタジアムに集まるだけに、厳しい声も飛ぶ。それを歓喜に変えるのが浦和イレブンの使命だ。
5人を前線に角度をつけて連係を。
その狙いは、こうだ。サイドバックが中盤のインサイドに絞ることで中央の縦ゾーンの密度を高めてポゼッションを安定させる。と同時に、インサイドハーフを押し上げ、アタッキングサードで決定的な仕事に絡ませる。また、中央を固めることでカウンターに対するリスクマネジメントも行う。
そこには、5人を前線に角度を付けて並べることで、ミハイロ・ペトロヴィッチ前監督時代に築いた攻撃のコンビネーションを取り戻したい、という狙いも窺えた。
キャンプ中に参考にしたのは、ペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティのビルドアップだった。
左ウイングの武藤雄樹は「前線に5枚が並んだ時のコンビネーションは、もともと持っているものがあるので、中と外の崩しをうまく出せれば、数的優位を作って攻められる」と話せば、宇賀神も「サイドバックの最初のポジション取りはインサイドから、と言われている。僕はサイドの選手なので、これまで360度から敵が来る状況でプレーすることがなかった。すごく新鮮」と語り、いきいきとした表情で、新しい試みにトライしていた。
広島戦では3-2-5移行の仕組みを変えた。
もっとも、新しい戦術を習得するには時間が掛かるものだ。キャンプや開幕戦で思うような攻撃が仕掛けられていないという判断があったのだろう。2節の広島戦では修正が加えられた。4-1-2-3から3-2-5への移行はそのままで、選手の立ち位置を変えたのだ。
攻撃を組み立てる際、左サイドバックの宇賀神が左ウイングの位置に上がり、左ウイングの武藤が内側へ、そして左インサイドハーフの青木拓矢がアンカーの近くまで下がって、3-2-5を作り出した。
この修正の背景には、負傷欠場した柏木陽介に代わって本来はアンカーの青木がインサイドハーフで起用されたチーム事情や、宇賀神を上げることで広島の攻撃のキーマンである右サイドハーフの川辺駿を押し込みたいという思惑があったかもしれない。
しかし、1点リードで迎えた後半、フォーメーションを変更して反撃に出た広島に対応しきれず逆転されると、3節の長崎戦では両サイドバックを敵陣でプレーさせるなど、修正を施したものの結果が出ない。