スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ジダンは戦略家としても超一流に!
スターを外し、守備重視でPSG撃破。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2018/03/10 07:00
今季のレアルはCLを重要視するほかない。だが前人未到の3連覇を果たせば、ジダンの名声はさらに上がる。
ベイルより献身的に守備する選手を。
「ゲームプランがはまった。我々は立ち上がりから真剣な試合をした。高い位置からプレスをかけてね。パーフェクトな試合ができたよ」
試合後しばらくして会見場に現れたジダンは、穏やかな笑みを浮かべながらこの日の采配を自賛していた。
ファーストレグで2ゴールのアドバンテージを得れば、攻撃より守備を重視した人選で試合に入るのは当然のことだ。そう考えれば2日前に全体練習に合流したばかりのモドリッチやクロース、守備力の低いイスコやベイルより、コンディションが万全で献身的に守備に走れるアセンシオやルーカス、コバチッチらを選ぶことは理に適っている。
会長経由で選手からの不満が伝わる。
ただし、それは他クラブならばの話だ。
ことレアル・マドリーにおいて、世界中の注目を集めるビッグゲームでスター選手を4人も外すことなど、もっての外である。
第一次フロレンティーノ・ペレス政権下の2004年にトップチームを率いたマリアーノ・ガルシア・レモンはこう言っている。
「レアル・マドリーでスター選手をベンチに座らせるのは困難だ。多くの監督がそのせいでクラブを追われている。当時は起用するに値しない選手を先発から外すたび、会長経由で不満が伝わってきたものだ」
現役時代に15シーズンに渡ってレアル・マドリーのゴールマウスを守り続けた英雄も、監督としては僅か3カ月でクラブを追われている。そんな彼が発した次の言葉は興味深いものだった。
「ジダンの采配には一貫性がある。だがそれ以上に重要なのは、彼が会長からリスペクトされていることだ。私には彼が持つ半分の“力”もなかったよ」