あのジェラードも「感銘を受けた」。

　現役時代の実績と温和な人柄によって選手たちのリスペクトを集め、スター集団を気持ちよくプレーさせるグループマネージメントの巧者。

　これまでジダンはそんな評価を受けてきた反面、戦術家、戦略家としては能力不足や経験不足を指摘されてきた。

　だがジダンは勝負どころでアタッカーを次々に投入する強気の交代策で勝利を掴んだファーストレグに続き、勝負のセカンドレグでも戦略、人選の両面で敵将ウナイ・エメリに完勝した。

「今夜見た戦術には感銘を受けた。2年連続で、過去4シーズンでは3度もチャンピオンズリーグで優勝するためには、選手の能力だけでは足りない。エゴの強いスーパースターを抱えているのなら尚更だ。然るべきトレーニングを行い、よくオーガナイズされたチームを作らなければ、選手個々が感覚に頼ったプレーに走っていたはずだ。だからジダンはもっとリスペクトされるべきだと思う」

　試合後そう言ってジダンの采配を讃えていたのは、イングランドのテレビ中継にゲスト出演していたスティーブン・ジェラードだ。

　翌日の国内メディアが同様の賞賛で溢れていたことは、言うまでもない。