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錦織圭と伊藤竜馬、同じ我慢の時。
「生き延びていかないといけない」
posted2018/03/07 07:00
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AFLO
あいだに数日をはさんで同じような場面に遭遇し、小さくため息をついてしまった。
最初はインターネットのストリーミングで見た、メキシコ・アカプルコの錦織圭。次は横浜市日吉で見た下部ツアー、慶應チャレンジャーの伊藤竜馬。錦織は緩衝材の入ったフェンスにラケットをぶつけ、伊藤はフレームが折れないように角度を加減してサーフェスに叩きつけた。
プロフェッショナルとして決して褒められる行為ではないが、両者とも体の中にモヤモヤをため、フラストレーションのしばりから解放されたくてラケットを投げたのだろう。
逆転負けの結果も同じだった。錦織は将来のトップ10入りが期待される18歳、デニス・シャポバロフに敗れ、ツアーレベルへの復帰第2戦は初戦敗退となった。6年ぶりのチャレンジャータイトルに王手をかけていた伊藤はランキング下位の内山靖崇に敗れ、準優勝に終わった。チャレンジャーの決勝ではこれで10連敗となった。
伊藤は第1セットを奪い、第2セットも先に相手のサービスゲームをブレーク、主導権を握ったかに見えたが、すぐにブレークバックを許して流れを手放した。強風が吹く中での難しい試合だったが、大事な場面で果敢に攻めることができず、次第にアンフォーストエラーが増えた。
表彰式を待つ間、身動きしなかった伊藤。
表彰式を待つ間、ベンチで視線を下向きにして身動きしなかった伊藤は、口惜しさを飲み込んでから、こう話した。
「リードした時に、アンフォーストエラーを減らしつつ、しっかり攻められるプレーをしないといけない」
自然とノリノリになっていかなければならない場面で、逆に自分でつまずいてしまうのは、勝ち運に恵まれない選手によく見られる傾向だ。倒れかけている相手を助け起こしてしまい、なんとか巻き返そうとしても、一度傾いた流れは止められない。確かにフラストレーションの溜まる展開ではあった。