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錦織圭と伊藤竜馬、同じ我慢の時。
「生き延びていかないといけない」 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byAFLO

posted2018/03/07 07:00

錦織圭と伊藤竜馬、同じ我慢の時。「生き延びていかないといけない」<Number Web> photograph by AFLO

ロンドン五輪で伊藤(左)は添田(中央)、錦織とともに日本選手団の一員だった。それぞれが今の立ち位置で、もがいて戦っている。

「やっぱり、今、もがいてますね」

 伊藤の自己最高ランキングは2012年10月にマークした60位。しかし、右ひじの故障もあって、このところ丸2年、四大大会の本戦から遠ざかっている。ランキングを上げるために出場している下部ツアーでも、思うように勝ち星は増えない。今季は全豪オープンの予選を含む4大会ですべて初戦敗退というスタートだった。

 試合後、伊藤に尋ねた。

――もがいている?

「やっぱり、今、もがいてますね。優勝とか決勝(進出)とか何大会も行ければ試合数も増えるし、自信にもつながってくると思うので、まずはそこを抜け出すことですね」

――メンタル的にも苦しんでいるのか、それとも、もがきながらも冷静に対処できているのかな?

「やっぱりランキングとか見てしまうことがあるので、そこの葛藤はあります。自分のプレーはいいのに勝てなかった時期もあったので、悩んでいる時期もありました。1月とか2月とか。それをちょっとずつ抜け出しているのかな、というのはあります」

我慢強くやるけど、攻撃も忘れずに。

 今年で30歳になる中堅は、否定的な言葉が口をついて出ても必ず前向きな言葉で回収していく。1人の優勝者を除き全員が負けて大会を終えるテニス選手の、それが処世術だ。否、処世術は失礼だ。正しいマインドセットと言い換えよう。そうやって1つの大会を総括し、次のトーナメントに備えるのが第一線のツアー選手だ。

 確かに、きっかけになり得る準優勝ではある。これを続ければ抜け出せる、またチャンスがやってくる、そう信じ、次戦への期待を決勝敗退の悔しさとごちゃ混ぜにして、モチベーションに変えるのだ。

 自分に何か言い聞かせながら試合をしているか、と伊藤に聞いた。

「我慢強くやることですね。我慢強くやるけど、攻撃も忘れずに、みたいな感じがぼくに合っている」

 我慢強く、か。プレーもツアー生活も……、という意味に受け取った。

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