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小平奈緒がオランダ修行で得たもの。
「競技者としては、もっと……」
text by
藤田孝夫Takao Fujita
photograph byTakao Fujita
posted2018/02/24 08:00
柔らかな笑顔を見せる小平。単身で乗り込んだオランダの地で、その潜在能力は爆発した。
最初に成績が出なくても心配しちゃダメ。
「こっちでは、脈をみながらトレーニングする事が多いんです。あまり負荷をかけ過ぎないというか、ゆっくりペースを上げてレベルを高めていく感じです」
確かに日本だと、ある程度高い負荷をかけながら、少しずつ限界点を上げていくような印象がある。同じベクトルでも、考え方が逆なのだ。つい最近、チームメートで一番の仲良し、マルゴ・ブーア(ソチ五輪500m3位)に言われた言葉は小平を安心させた。
「日本人はシーズン初めに記録が出る事が多いけど、私たちは(五輪のある)2月にピークをもっていく事が多いの。だからシーズン最初に成績が出なくても心配しちゃダメだよ」
確かにピーキングの問題は重要で、“オリンピックに合わせる”という最終目標に向かい、選手とコーチは試行錯誤を繰り返す。ソチでオランダ勢の大活躍を見せつけられた小平にとっては、説得力のある言葉だった。
新天地で暮らす小平の“強い意志”。
小平が日本を離れてから、5カ月が経とうとしていた。その間、日本には一度も帰っていない。休みの過ごし方にも決まりはなく、専らオランダ語の勉強に費やしているらしい。
「今は、半ホームステイです。アパートなんですけど。一階にオーナーさんが住んでいて、部屋借りみたいな感じです。昔大きな牛舎だったところを改装した家の、屋根裏みたいなところに住んでます。すごい田舎です(笑)」
とっさに突っ込んでしまった。
「ハイジじゃん!」
スケートについて語る時、小平の言葉には淀みが無く、常に自分の前に指標を置きながら進んでいるのが伝わってくる。自分の発言と行動についての責任感は、ひときわ強い。ただそれらの印象とは裏腹に、普段の彼女は大人しくて、優しくて、気遣い屋さんだ。
「気を遣うのは得意です(笑)。でも、それが結構、マイナスになる時もありますけど。やっぱり競技者としてはもっとガツガツいかないと……。岡崎(朋美)さんとかにも言われるんですよ」