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小平奈緒がオランダ修行で得たもの。
「競技者としては、もっと……」
text by
藤田孝夫Takao Fujita
photograph byTakao Fujita
posted2018/02/24 08:00
柔らかな笑顔を見せる小平。単身で乗り込んだオランダの地で、その潜在能力は爆発した。
スケートが好きな人たちの記憶に……。
約10年、私もレンズ越しに彼女を見てきた。そこに映る小平奈緒はいつもどこか遠慮がちで、自分で自分を過剰に抑制しているように感じていた。
レースで優勝したり記録を出した時も、天に突き上げるようなガッツポーズで自分を表現する事はなかった。2度の五輪でも、競技後のインタビューでは、歯を食いしばって涙をこらえる彼女がいた。
「『泣けばスッキリするのに』って、後輩や友達にも言われました(笑)」
でもそれらもみんな、彼女の性格というよりは意志なのだとしたら、それこそが小平奈緒の魅力であり、強さなのかも知れない。何より今こうして、たった一人オランダの地に立っているのも、“変わりたい”という彼女の強い意志に他ならない。
「いつかスケート選手として最後を迎える時にも、ティアルフのリンクに立ちたいという夢はあります。そこでオランダ語で挨拶して、スケートが好きな人たちの記憶に残る選手になりたいな、って思ってます」
(Number863号『小平奈緒 オランダを求めた理由。』より)